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特別記事 住宅のユーティリティ再考
水回りのレイアウトから見る現代住宅 (『新建築住宅特集』2016年8月号 掲載)

ポスト近代の住宅の行方

ユーティリティの歴史は近代化の歴史そのものと言える。たとえば日本では、風呂は特別な一部の人だけのものから、共同浴場の時代を経て、戦後の公団住宅の建設がきっかけとなり一般家庭に風呂が普及した。ただ、日本では西洋のように各個室に風呂とトイレを設置することだけは普及せず、各家庭内では共同で利用されている。また、ユーティリティには清浄と不浄を扱うという、他の居室とは違う大きな特徴がある。裸=恥ずかしいもの、排泄=汚いものを納める浴室やトイレは、特にプライバシーが強く求められ、基本的に住宅のその他の部分からは切り分けるか隠されている。そして、これらふたつの──共有はするがプライベートで使用する──という捻れた状況があるため、日本のユーティリティには西洋の住宅以上に建築家の試行錯誤が表れているといえよう。そこで、ここではユーティリティを、空間の配列、特に「いかにして他の部分と切り分けるのか」ということを軸に見ていくことにしたい。

  • 「HOUSE YK / Islands」
    赤松佳珠子(JT0601)

  • 「9スクウェア・グリッド-スチール家具の家」
    坂茂(JT9805)

  • 「矩形の森」
    五十嵐淳(JT0212)

  • 「住宅K」
    北山恒(JT0302)

  • 「縁側の家」
    手塚貴晴+手塚由比+池田昌弘(JT0401)

  • 「江東の住宅」
    佐藤光彦(JT0306)

  • 「e-HOUSE」
    福島加津也+冨永祥子(JT0607)

  • 「廊の家」
    武井誠+鍋島千恵(JT0901)

  • 「土橋邸」
    妹島和世(JT1206)

  • 「C」
    青木淳(JT0009)

分けない

まず、そもそも分けないタイプがある。箱がずれながら連結した細長い空間に串刺すように水回りを並べた「HOUSE YK / Islands」、家全体を9マスの正方形に分割しそれらが引戸で仕切られることでワンルームにも9つの部屋にもなる「9スクウェア・グリッド-スチール家具の家」、ワンルームの中に林立する柱がゆるやかな境界をつくっている「矩形の森」などは分けないワンルームのタイプ。コンクリートの床の上に無造作に浴槽を置いた「住宅K」や、天井を設けず引戸を開け放てば空気的には一体となる「縁側の家」は、居室とゆるやかに繋げたタイプであり、シンプルでラフな雰囲気は、この後の時代を見事に先取りしている。田の字に区切られた4つの部屋の仕上をすべて変えることで水回りを含めたすべての部屋を等価に扱った「江東の住宅」と、風呂好きの家族のため浴室を最もいい場所にしかも2カ所設けた「e- HOUSE」は、主従の関係が逆転し、感覚として居室と繋がったタイプだといえる。ドーナツ状の空間の一部を切り出してユーテリティにした「廊の家」や、廊下状の空間の一部に浴室や洗面が放り出される形で配置された「土橋邸」は、動線自体をユーテリティにしたタイプであり、さらに「C」 では通常なら行き止まりのはずの部屋の奥にさらに部屋があることで狭いユーティリティの空間に奥行きを与え実質以上の広がりを生んでいる。

  • 「クローバーハウス」
    宮本佳明(JT0705)

  • 「L」
    青木淳(JT0004)

  • 「伊丹の住居」
    島田陽(JT1304)

  • 「UNS」
    有馬裕之(JT0109)

隠す

隠すためには地下に埋めてしまうのが手っ取り早い。
「クローバーハウス」では、擁壁をえぐり取って挿入された鉄板の裏に隠される。「L」も擁壁をえぐり取り、道路と繋がった地下空間をつくるという部分までは同じだが、さらにその奥にドライエリアを設け、ふたつの地下空間に挟まれた不思議な距離感をつくっている。また、住宅を設計する作法としてはトイレの扉は見せないほうが正しいのだが、「伊丹の住居」では、家具の中に便器を納めることで、隠すことと見せることをぎりぎりのところで共存させている。

  • 「山崎町の住居」
    島田陽(JT1209)

  • 「Casa O」
    髙橋一平(JT1412)

  • 「ウノキ」
    蜂屋景二(JT0008)

  • 「大田のハウス」
    西沢大良(JT9812)

  • 「上尾の長屋」
    長谷川豪(JT1411)

  • 「にわのある家」
    近藤哲雄(JT0707)

床で分ける

小さな住宅では階ごとに床で分ける方法もあり、都心の狭小住宅である「UNS」では屋上に水回りだけがペントハウスのように飛び出し、「山崎町の住居」では家型の水回りが基壇の上に乗る。「Casa O」は2階にモザイクタイルを全面に敷き詰め、ベッドルームに浴槽が置いてあるのではなく、浴室にベッドルームを置いた新しいタイプであり、バスリビングという室名表記も含めて重要だろう。「ウノキ」も平面的には区切りがなく床によって分節するタイプだが、延床面積約40m2の単身者住宅という特殊なプログラムであり今日的な住宅像を描いている。さらに天井の低さに着目し、ユーティリティを2段に積んで、天井高のある居室を実現させた「大田のハウス」、通常なら余ってしまう階段の上の吹き抜け空間に階段状の水回りを置き、天井高のとれない上部は屋根を開けて中庭状のバルコニーとして採光と通風を得る「上尾の長屋」、部屋と庭が積み木のように積まれた「にわのある家」などは、単純な床でも壁でもなく立体的に分割させている。

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