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日本の窓を、考える③ 窓から見える植栽は、家と同時にデザイン (『コンフォルト』2016 August No.151 掲載)

熊澤安子さん(建築家)

建築家・熊澤安子さんは住宅の窓辺から必ず緑が見えるように、家の設計と植栽計画を同時に進めます。熊澤さんが大切にしている窓の役割と、造園家と相談しながら山の木と山野草でつくる庭について聞きました。

植栽を楽しむための窓を設計する

私にとっては窓の配置を考えると同時に植栽を計画することは、とても自然なことです。窓の配置の基本は、家中あちこちにつくるのではなくまとめて、美しい壁と対比させメリハリをつくることだと思います。生活するうえで、背後に壁が広がり、守られる感じもあったほうが落ち着いた空間ができますね。窓数が多く、部屋の隅々まで明るいと、かえって光を感じにくいし、落ち着きません。

窓の役割を意識することも大切です。出入り、通風、採光、景色を見るというふうに、窓にはいくつかの役割がありますが、私は景色を見るための窓と、ほかの機能のための窓を分けてデザインするようにしています。それには1つの壁面の中に役割の違う窓を割り付けるのも有効です。たとえば、リビングやダイニングなど家のメインになる場所は、景色を見るための窓として、面積を大きくとったFIX窓にします。風を通すために大きな窓を開放する必要はないんです。通風窓は格子と網戸、開閉建具を組み合わせ、景色を見る窓のサイドや下側に設ければいいし、出入口と通風を兼ねるケースもあります。風の通り道を用意し、窓をまとめながらそれぞれの機能を果たすことができます。

庭の景色を存分に眺めることができる窓があると、暮らしが本当に豊かになると思います。敷地の広さや家の規模にもよりますが、窓の外に植栽をデザインしようとすると、プラン上でここだというポイントが、3カ所くらいは決まってきます。小さな庭でも点在させると効果が大きいですね。この春に竣工した「荻窪の家」の場合は、道路からのアプローチとその先の玄関脇に小さな植栽スペースをつくり、2階のリビングから梢を楽しむメインの庭をつくりました。隣地境界に面して通気用の小窓をつくるときは境界に沿って植栽をしたり、お隣の家の樹木を借景のように取り入れることもあります。

熊澤安子さん
1971奈良県生まれ。95年大阪大学工学部建築工学科卒業。96~2000年DON工房勤務。2000年遊住舎設立。07年熊澤安子建築設計室に改称。
右/今年4月に竣工した「荻窪の家」。アプローチと隣地境界に施した植栽が出迎える。中心の背の高い木はヤマボウシ。その下にモミジ、ツツジが植えられている。1階の子ども室の窓からも木の枝葉が見える。左/アプローチの植え込み。下草は日向で育つ「野の花マット」を植えて、10数種類の山野草で囲む。「野の花マット」は、武蔵野の山野草を寄せ植えした植生マット。
2階リビングの大きな窓から風に揺れる梢を楽しむ 南庭の植栽を1階と2階から楽しむことができる。
上/2階のリビングには、植栽を楽しむために大きな窓が設けられている。窓台はちょっと腰掛けたりするのにちょういいスペース。窓の右側の半間はテラスへの出入口兼通風用。南庭には高さ5mほどのアオハダとコナラが植えられており、上部の梢がゆらめく様子に癒される。これから根付くと枝葉が伸びる。下/1階は子ども室と寝室が南庭(約3坪)に面している。「手前が落葉樹のアオハダとコナラの株立ち。繊細な幹を透かして、向こう側にボリューム感のある樹種を植えて、小さな庭に奥行き感を出しています」(楠耕慈さん)。シャラやアセビなどの山の木に、イロハモミジ、ナツハゼ、ニシキギなどの寄せ植えポットも利用。もとからあった万年塀を撤去して隣家の植栽を借景にした。この住宅用の防火戸をはじめ、造作の木製建具以外は、LIXILのサッシを使用している。
荻窪の家 所在地/東京都杉並区 竣工/2016年 構造・規模/木造2階建 設計/熊澤安子建築設計室 外構・造園/野草の庭・茶庭づくり風(ふわり) 楠耕慈

細くしなやか繊細な趣きの山の木で植栽を

私が植栽に使っているのは「山の木」と「山野草」です。一般に植栽される木は植うえ木き の生産者が畑で育てた若い木がほとんどで、生長が早く、幹はまっすぐで太くなり、葉が繁るようになるので、樹形をコントロールするのが難しく、堅い印象の庭になりかちです。私は山道で目にする大木の木陰で、実み生しょうの木の細い枝がゆらゆらと揺れる風景に心惹かれます。

10年ほど前にどうしても山の木で庭をつくりたいと思い、扱ってくれる造園屋さんを探しました。でもなかなか見つからなくて、山野草の販売店「風ふわり」の代表、楠耕こう慈じ さんに山の木を手に入れてくださるように頼み込み、造園までお願いしたのが最初でした。以来、いろいろな仕入れ先を探してもらい、庭づくりをお任せするようになりました。

楠さんの植栽はまず5〜6メートルの高さの木で木陰をつくり、その下に繊細な枝ぶりの中低木や山野草を添えて生け込むような手法で、1階から眺めるときには幹の表情や枝が風にゆれる様子を楽しめ、2階では高い木の梢の枝葉の雰囲気に安らぎを感じます。山の木は大きな木々の陰で育つため、樹齢が20〜30年ものでも幹が細く、枝ぶりも繊細です。そのような木は畑の若い木と違って、急には大きくならず、樹形があまり変わらないのも魅力です。

ただ、移植するときには根巻きの大きさに注意が必要です。「荻窪の家」では、アオハダとコナラの株立ちを植えましたが、背が高いと根巻きの大きさも1メートルほどになります。この庭は敷地の奥にあり、隣地境界が迫っているので、家が建ってからでは搬入ができません。楠さんが施工が進む前にうまく段取りをしてくれました。

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