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住宅をエレメントから考える(後編) 間仕切りのイメージ (『新建築住宅特集』2016年4月号 掲載)

「住宅をエレメントから考える」と題し、2回にわたって住宅の部位から建築・空間を考える試みをします。前回の「床」に続き、第2回は「間仕切り」を取り上げ、間仕切りにまつわるイメージを『新建築住宅特集』『新建築』からピックアップしました。分析・編集は塩崎太伸氏に協力を仰ぎ、5つのグループに分け、92のイメージを集めています。何と何をどのように間仕切るのか。間仕切る対象や間仕切る方法の強度にはさまざまなバリエーションがありますが、共通して何かと繋がりたいという生活の意識が垣間見えます。そのような意識を映し出す間仕切りを通して、これからの建築や住まいの可能性が見えてきます。 (編)

「間仕切り」は前回検討した「床」に比べて少し広い言葉だ。しかし水平か垂直かの違いはあれど空間を規定する要素という点では同じで、床は空間を上下に分ける間仕切りだともいえる。一般に間仕切りは建具など室内のものと捉えられるがそれは間仕切る全体を住宅と設定する場合であって、最も原初的な間仕切りは安全な生活と危険な外界の区別だろう。雨風を凌ぎ外敵を防ぐ間仕切りは、守る単位が家族であればシェルターとしての住居の外壁が、単位が集団であれば市壁・堀・校門などがその役割を担ってきた。ほかにも、家族内のプライバシーを守る間仕切り、オフィスでの集中力を高める間仕切り、防火の間仕切りなどその目的は多岐にわたる。日本の古建築は連結より分割されることで空間の性格を獲得してきたから、空間を間仕切るエレメントとそれを用いた日常の営みはさまざまに展開した。日本古来の間仕切りを見ると、そのどれもが「間仕切ること」と「繋げること」というアンビバレンツな空間的性格を成し遂げるものであることが分かる。閉じるけれど開け放ちたい、閉じつつ何かは通り抜けたい、曖昧に間仕切りたい、時に応じて間仕切り方を変えたいといったような、言葉では表現しにくい微妙な生活の感覚がこれらの間仕切りの形式を表出させてきた。
また、近年私たちの生活における間仕切りの役割や感覚は変化しつつある。たとえば住宅の中をひと繋がりに使いたい家族にとってnLDKの間取りをつくる壁や建具は障壁であるし、都市とのプライベート/パブリックの境界を外壁レベルに設けたくない家族にとってはたとえ防犯機能を外壁部に必要とするにしても、強固で重苦しい玄関ドアは不要となる。複数の目的を同時に担い生活を区切って規定してきた間仕切りが、住人の日常の感覚に寄り添うようにルーズになって、間仕切りは重責から解き放たれて自由になってきた。
前回の床では、建築家のさまざまな思考を表すフレーズの類似を集めて床を思考する言葉の幅広さからその可能性を探ったが、今回は空間を間仕切りつつ繋げている多くのイメージを集め、その状況を表す感覚に応じて分類した。間仕切りとなると建主も建築家もこだわりのある豊かなイメージを携えているように思ったからである。そこで間仕切りのイメージについて似たものを集め、何か新しい形式なり意味の広がりを見出そうと思う。差異ではなく似たものに着目し、イメージの類似性*(ヴィジュアル・アナロジー)を手繰り寄せて、住まいにおける新しい間仕切りの可能性を見出せればと思う。(塩崎太伸)

*似ているものを結びつけて思考するために美術史家のB. スタフォードが提唱した言葉。
日本古来のさまざまな間仕切り 日本古来のさまざまな間仕切り
(記号は下記注釈参照、2~6頁の間仕切りのイメージの分類に沿う)

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