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日本の窓を、考える② 日本の自然を窓辺の意匠に (『コンフォルト』2016 April No.149 掲載)

本田純子さん(テキスタイルデザイナー)

川島織物セルコンで織物の企画からデザイン、組織設計を行うデザイナー・本田純子さん。
建築家のアトリエ兼住宅の窓の魅力を引き出すしつらいを通して、現代の日本の暮らしに合った窓辺の装飾、
テキスタイルの魅力を生かす窓について語ってもらった。

日本の窓辺は障子からカーテンへ

日本の暮らしの中で、カーテンの歴史はそれほど長くはないと言っていいでしょう。一般住宅の窓辺にも普及していったのは戦後のことです。西洋と日本では建築のなりたちも文化も違います。重厚な石造が中心の西洋の建物に対して、木造の建物に暮らしている日本人が本当に求めるカーテンは、どんなものだろうかと私は考え続けてきました。ゴシック調やロココ調、アールデコ、アールヌーボーなど、西洋の様式から生まれた文様を取り入れるのではなく、日本の土壌に根付いたカーテンの意匠や捉え方があるような気がしていました。

昔の日本の窓辺を思い起こしてみると、そこには障子があるのが一般的でした。障子の向こうに自然の景色があり、庭の樹々や花も目に入り、人々は季節の移り変わりを感じながら暮らしていました。白い障子紙が光をやわらかに透過したり、樹木の影が映り込んだりしながら、住まいの内と外をゆるやかにつないでいたのです。そういう微妙な変化を愛でる感性が、日本人の根底にあって、内と外をきっちりと分離するよりも、外の景色や空気感を室内に取り込む文化をつくっていったのではないでしょうか。窓が額縁となり、自然の景色を絵画のようにとらえていたのですから、窓辺に際立った意匠を加える必要はなかったのかもしれません。一方で室内では、屏風や襖に花鳥風月などの絵画が描かれ、しつらいのなかに自然の意匠を取り入れていました。

現代の住環境はそのころとは違い、自然から遠ざかっていますし、高層マンションに暮らすケースも増えていますね。それでも、長い時間のなかで育んできた日本人の自然観は生き続けていると思います。それを手掛かりに、15年前に社内で立ち上げたのがSH(Sumiko Honda)ブランドです。たとえば、雪景色や花の咲く一瞬を捉えたり、風の流れ、水の流れなどを抽象的なかたちで表現したり。自然の景色を意匠化し、違和感なく窓辺に取り入れられるデザインを織物に表現してきました。

色彩を絞り、白い織物の質感で空間の奥行きを演出する

今回、建築家・小野喜規さん設計のアトリエ兼住宅の窓にしつらいの機会をいただきました。小野さんは住まいのお庭に増築をされたのですが、以前からある樹々や緑を大切にして繊細な設計をされています。玄関にはモミジの木が来客を出迎えるように枝を延ばしていますし、応接室では庭に向けられた低めの奥行きの深い窓が印象的です。窓辺には両方とも白のロールスクリーンが仕込まれ、陰影や日の移ろいがスクリーンに投影されることも、小野さんは楽しんでいます。それを拝見して、私が新しく何かを加えるとすれば、色彩よりも、「質感」を窓辺に重ねていって奥行き感を出したり、雰囲気をつくることかもしれないと考えました。玄関にはドアとサッシの割り付けに合わせてカーテンをノレン状に仕立てました。風通織りといって2層で絵柄を織り込んだ生地を使い、さらに平織りのレースで裏地をつけてみました。質感を上げると同時に自重がでて落ち着き、耐候性も高めます。表地の糸は生成りのシルクとポリエステル。絵柄は満月の景色に小枝をデザインしたものですが、織りの表情が光の加減で変わったり、モアレ効果があらわれたり。加えて室内側にもう一枚白い薄地をかけて、空気の流れの柄を重ねました。同じような白色系のなかに質感の違いを感じ取るのも日本人の感性の特色ではないでしょうか。

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