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住宅をエレメントから考える(前編)
床にまつわる8つのフレーズ (『新建築住宅特集』2016年3月号 掲載)

「床削り」ギュスターヴ・カイユボット

「住宅をエレメントから考える」と題し、2回にわたって住宅の部位から建築・空間を考える試みをします。第1回は「床」を取り上げ、床にまつわるフレーズを2001年以降の『新建築住宅特集』『新建築』からピックアップしました。分析・編集は塩崎太伸氏に協力を仰ぎ、8つのグループに分け、150の建築家のフレーズを拾っています。それぞれ独立したフレーズですが、繋ぎ合わせることで、建築や住まいの可能性が見出せればと思います。 (編)

19世紀後半の印象派の画家カイユボットの「床削り」は、忘れてしまいがちな床への洞察をあたたかく思い起こさせてくれる絵画である。床は面であると共に厚みのある材料であり、広がりと質感と色と時間をもっていて、人がその上で生活していることをたちどころに教えてくれる。
「床」を建築の部位として考察するにあたり、建築家の作品解説における床にまつわるさまざまな側面の言葉(フレーズ)を紙幅の許す限り取り上げた。言葉の力を借りることで床の潜在的意味を再度照らし出すことが目的である。しかしながら、床そして建築は言葉で定義される存在であると同時に実体である。床は構造体と下地材と仕上げ材で構成され、仕上げ材には目地があり、その切り替わりには見切り材が生じ、幅木は床面と壁面の純粋な接触に対し概念的に邪魔をする。だから建築家の言説は、概念と実体の間で常に葛藤に満ちている。
ある床が成立するためには、まず外在的な与件(建主の要望や使用用途、構造・技術・法規などの制約、地域や社会の時好など)がある。そして同時に建築家の思考が内在的な条件として関係する。後者にはそれぞれの建築の構成要素である床そのものの性質(大きさ・素材など)と、要素間の統合関係つまり建築の構成についての性質(高さ・位置関係など)とがある。また、このようにあるエレメント(ここでは床)について思いを巡らす時、これまで床として考えられてこなかったことに気づき、床に新しい意味や要素や関係が加わって、思考の領域、さらには住まいの可能性を広げる。
フレーズを追いながら床にまつわる建築家の思考の側面を、8つにグルーピングして意味の広がりをみた。それらは床を起点とする建築の思考総体の追体験であると同時に、住宅を考えるうえでの発見となるのではないか。フレーズを洗い出すことから事柄が繋がり、建築や住まいの可能性が広がるきっかけになればと思っている。(塩崎太伸)

床が特徴的な作品の年表※クリックで拡大表示

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