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トラフとつくるタイル VOL.2 (『コンフォルト』2015 August No.145 掲載)

トラフのふたりはLIXILものづくり工房とタイルを試作中。
さて、試作品第2弾では、トラフの要望はどう実現されたのか?
タイルづくりの現場も見学しようと、禿さんが愛知県常滑市へ向かった。

タイルってどう作るの?工場見学に行ってみよう!

地場産業、土管づくりの高い技術を受け継ぐ湿式タイル

LIXILのグループ会社である日本モザイクタイルを訪ねた禿真哉さん。タイル製造は分業体制が多いなか、日本モザイクタイルは、粘土や陶石などの原料生産から釉薬の開発・調合、タイル成形・焼成までを一貫生産している。つまりタイルづくりのAtoZを見ることができるのだ。モザイクタイルとは大きさが50平方センチ以下のタイルのこと。この工場では5×5センチが最小の製品だという。

タイルづくりは大きく湿式と乾式に分けられる。湿式タイルの主原料は水分の多い粘土。それを真空土練機にかけ、ところてんのように押し出し、ピアノ線で切断し、成形していく。金太郎飴の要領だ。粘土も粗く、骨材の粒は2~3ミリ程度。焼成すると陶器ならではの味わい、温かみのある表情がでる。

一方、現在もっとも一般的な製造方法が乾式プレスと呼ばれるもの。原料はパウダー状の石を主に調合した粉。これを金型に充填し、油圧プレス機で押し固めて成形する。乾燥や焼成時間が短く、品質も均質で安定しやすく大量生産に向いている。さらに、金型の形状や釉薬ののせ方によって多彩なデザインや風合いを出すことも可能。モダンでクールな表情が特徴だ。最近はなんと湿式タイルの味わいに近いものも金型でつくれるという。

主流を譲った湿式ではあるが、この工場では湿式タイルの量産体制も備えている。その理由は、常滑は古くから土管の生産地であり、押し出し成形技術が発展してきたからだ。その高度な技術が今、湿式での薄いタイルづくりに継承され、仕上がりの美しさと少ロット生産も可能ということから、外装タイルとして人気が高まっている。
「タイル製造の現場を見たのは初めて。湿式、乾式のそれぞれの特徴がよくわかります」と禿さん。

素地のつくり方には湿式と乾式がある

押し出されてくる柔らかな湿式の素地。水分は約20%。粘土や石英などを混ぜ一昼夜かけて練る。押し出し口に釘を付けひっかき模様をつけたスクラッチタイルにしたり骨材の含有量を調節して、自然な表情を出すこともできる。 高圧でプレスする乾式の原料はパウダー状に砕いた石を主にして調合した粉。金型を傷めないようにできるだけ細磨する。水分は約5%。1ラインで1日に1200㎡を生産できるスピード。次々にタイルができ流れていく。
プロの世界をちょっと拝見します。

プロの世界をちょっと拝見します。

手で、反りやバリを見極める検品作業の一つ。なぜかこの作業においては女性の方が有能だそう。

顔料系釉薬は色、質感、彩度や明度も自在の多彩さ

機械音が響き渡る大きな工場には、さまざまな工程が配置されている。その音が少し緩むのが釉薬の調合室だ。タイルにとって釉薬は、タイルの表情をつくるだけでなく汚れ防止のためにも必要不可欠なものだ。伝統的な釉薬は粘土、長石、木や藁の灰などからつくられ、長石のガラス質が接着剤の役割を果たし、土や灰に含まれる金属成分で発色させる。一方、現在、多くのタイルに使われているのが顔料系の釉薬だ。化学的に加工されていて多種多様な色が出せる。

釉薬室では5~6枚のタイルに調合した釉薬を手でスプレーし、試作品をつくっていた。これぞ職人技!釉薬をスプレーしてスケールで計る。規定0.6グラムで、付着したのは0.57グラム。誤差わずか0.03グラム。見学者一同、「おおっ」と思わず声を上げた。微妙な色違い、釉薬の厚み、その後の焼き色……。試作品をつくり設計側と検討し、決定するとラインのコンピュータに入力され、均質な製品づくりへとつながっていく。

湿式タイルは原料である土をブレンドすることで色や表情を出せるが、乾式タイルの原料の土はほぼ色。そこに釉薬の力で色、質感、彩度や明度を変化させバリエーションをつくっていく。釉薬はまさにタイルに魔法をかける薬のようなものなのだ。

この釉薬の微妙な加減。この後、第2弾の試作品を見た禿さんを大いに悩ませることになるのだが……。

成形後、乾燥し、施釉、窯入れのときにタイルを置く台(サヤ)に並べられたタイルは大きな台車に積まれ、焼成へと向かう。約100メートルの窯の中を約14~24時間かけて通過して焼成される。ほかほかのタイルが次々と運び出されてきた。

釉薬はタイルの表情を決める魔法の薬

何十種類もの釉薬を調合し、各施工物件ごとのタイル用釉薬をオリジナルで調合する。重要建築物の補修用タイル釉薬の依頼も多い。 サンプル用タイルに1~3回、スプレーで施釉する。0.01g単位の量で釉薬の厚みが変わり、それによって焼成後の表情も変わるというシビアな世界。
湿式タイルは成形後、サヤに載せて乾燥炉の中で3~5日間乾燥させ、この台車のまま焼成炉へ。乾式にはこの工程はないが、どちらもタイルの種類によってサヤを並べる配置が厳密に決められる。火の温度によっても発色が変わってくるからだ。
プロの世界をちょっと拝見します。

タイルは紙かネットを張って出荷準備 !

下左 / タイルは基本的に、施工の効率がいいように、300㎜角分を1ユニットとして紙やネットに張って出荷する。ネットは裏張りで目地詰めをしない接着剤張り用。
上 / ネットは壁に埋め込んでも変色しないよう樹脂にガラスコーティングがされている。
下右 / 紙張りの工程。裏足のあるタイルは紙を表張りにして、モルタル下地などにタイルを張った後、紙を剥がす。
日本モザイクタイルの工場。スタッフはそれぞれ真剣にタイルの検品や機械の調整を続ける。大きい工場だと感じたが、規模はそう大きくないほうなのだとか。

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