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連載コラム
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まちの仕掛け人vol.2 人が回遊するまちづくりをめざす情報発信基地「日比谷パティオ」

活気にあふれ、いきいきしているまちには、必ずといっていいほどまちを元気にしている仕掛け人がいます。新しいアイデアと、豊かなコミュニケーション能力を駆使してまちを盛り上げている、そんな人物にスポットを当て、彼らの活動の一端をお話いただきました。
第2回目は、再開発が著しい有楽町周辺で、ビル跡地の暫定利用による新しい空間づくりに取り組む仕掛け人・米持理裕さんに登場していただきます。

米持理裕(よねもちまさひろ)さん
(三井不動産株式会社ビルディング本部千代田開発部事業グループ主事)

1994年入社。千葉支店、都市開発第一事業部を経て、2006年より現職。

暫定利用でまちを活性化する

日比谷パティオがオープンしたこの土地には、もともと三信ビルというオフィスビルがありました。昭和5年に建てられましたが、老朽化が進み、安全性の確保が限界に達したため、やむなく解体することになったのです。その後、三信ビル跡地の建て替え計画は、隣にある日比谷三井ビルの敷地と合わせて同時に開発をするという方針が決定されました。ただ、日比谷三井ビルは今も稼働しており、開発計画に着手するまでは約2年間かかります。その間、三信ビル跡地をそのまま更地にして仮囲いをしたまま放っておくのはもったいない、何かすべきではないかということになりました。駐車場にすれば、一番簡単で収益があがるのですがそれではつまらない、何か将来の開発につながることができないか。2年間の暫定利用という位置づけの中で何ができるのかいろいろと考えたところ、民間の敷地を開放して一般の人たちに使ってもらえるような、まちの広場として利用するのがよいのではということになりました。

広場といえば、昨年、再開発により有楽町駅前に「イトシア」ができました。その際、駅前の道路を廃道にして広場をつくったことで、人の溜まりができ、この界隈では人の流れが変わったといわれています。有楽町駅から銀座に抜けるには、これまで有楽町マリオンから4丁目、5丁目の晴海通りが主な動線だったのですが、今は2丁目、3丁目の間のマロニエ通りに人が流れているようです。このような大きなまちづくりの成果を参考に、日比谷パティオでも人の流れを変えるような取り組みができないか。土地を開放した、ただの広場では味気ない。日比谷という土地は昔から東宝映画館や東京宝塚劇場、日生劇場などがある文化情報発信の場であり、都市計画的にもアミューズメントセンターとして位置づけられています。ならばこの跡地を、三井不動産がというよりは、日比谷周辺の人たちと一緒に盛り上げていく、ひとつの基地として活用しようということになり、情報発信を仕掛けていくことにしました。

日比谷パティオ全景。写真奥に見える木々は日比谷公園。ランチタイムや買い物途中の憩いの場としてだけではなく、アートやライブなど、さまざまな“情報発信”を楽しめる新しい場所

休日には家族連れやカップルなど、オフィスワーカー以外の人たちで賑わう

文化情報発信するコミュニティ広場

12月5日にオープンした日比谷パティオでは、主に1日単位で開催される「ヒビアカリ デイリー・プログラム」と数週間~数ヶ月単位の「ヒビアカリ スペシャルプロジェクト」を両軸に催しをしています。

会社としては、やみくもに集客することを目的にしているわけでも、商業などで収益をあげるためにやるわけでもありません。大きな投資となりますが、あくまでもまちの活性化のため、まちが活用できるような仕組みにしたいと、事務局を立ち上げてイベントを企画したり、外部から利用希望者を募り場所を提供することにしました。2年間でいろいろな催しを行い、賑わいを創出することで、将来の開発につながって欲しいと思っています。

ヒビアカリ デイリー・プログラムでは、今は木曜、金曜、土曜にライブイベントを行っているほか、1ヶ月ごとにアーティストにコンテナを貸し出して作品を展示してもらっています。才能や作品の発表の場として、多くのアーティストに活用していただきたいですね。

スタートしたばかりでまだまだこれからですが、数種類のフードワゴンが出店しているので、平日のランチタイムにはオフィスワーカーが、またスケート場(1月4日で終了)では、土日になると小さなお子さんを連れた家族や若い人たちが滑っている姿が見られます。近くの帝国ホテルやペニンシュラホテルがある影響からか、外国の方も憩いの場として利用されているようです。

インフォメーションセンター「パティオ・ステーション」。敷地内にはアートやライブなどテーマ別に使われるコンテナが点在

アートコンテナでは写真、イラスト、絵画、オブジェなど、さまざまな作品を紹介。写真はフォトグラファーの長谷良樹さんによる作品展「THE HAPPINESS WITHIN」(1月4日で終了)

フードワゴンで食事も楽しめる。数種類のフードワゴンが並び、メニューは時間帯、曜日、季節ごとに変わる

期間限定のスペシャルイベントのオープニングは、氷を使わないスケートリンク。(1月4日で終了)

まちの新しい一面を発見させるチャレンジ

複合開発の場合、タイムラグが生じることは度々あるのですが、それを利用して何かするということは、珍しいことだと思います。最初に日比谷パティオのような取り組みをしたのが一昨年。三井不動産の本社がある日本橋室町で、ビル解体後の跡地を半年間、暫定利用しました。

そのときは、仮設のプラネタリウムや託児施設を併設した実験的コンビニエンスストア「ハッピーローソン」、日本ファッションウィーク(JFW)のための会場、フットサル場などが登場し、まさに情報発信して日本橋を活性化しようという試みが行われました。日本橋はオフィス街と老舗のまちというイメージで、若い方や家族連れが来ることがあまりなかったのですが、この暫定利用によって幅広い層の人たちが訪れるきっかけになりました。フットサルについてはこれで終わってしまうのはもったいないと、オフィスワーカー有志チームが場所を移して活動を続けているようです。元々あるまちのイメージに加え、いろいろな人たちに新たな日本橋の一面を知ってもらう取り組みとして、この試みは面白かったのではないかと思っています。

垣根を越えて賑わいを広げる

日比谷公園は有名ですが、名前が先行して実際の場所をあまり知らない人が多いと思います。実は日比谷という住所はなくて、この日比谷パティオ界隈は有楽町1丁目です。日比谷パティオ周辺はオフィス街のためか、有楽町駅から晴海通りを越えて、こちらまでふらりと来るという人の流れは今のところあまり多くありません。将来的にはこちらに人を向けて、丸の内、銀座そして有楽町に日比谷公園、皇居まで含め、いろいろな人が都心を回遊しながら歩いて楽しめるようなまちづくりをしたいと考えています。今回、日比谷パティオで行う情報発信としてのイベントも、単発で行うここだけの催しでなく、周辺のまちを回遊してもらうための試みでもあります。日比谷パティオのイベントに来てもらい、そのまま帰るのではなく銀座や日比谷公園に寄ってもらう、そんな人の流れができればいいと思っています。

大丸有協議会(大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会)の中心メンバーである三菱地所さんでは、朝EXPOと題し、出勤前にヨガや皇居周辺を走るランニングなどのイベントを開いて人気を得ているそうです。そんなことを私どもでもやってみたいと思っています。日比谷に限定せず丸の内、有楽町、銀座と広がりを持って面的な賑わいづくりができるのではないでしょうか。

箱づくりからソフトづくりへ

私自身は3年前からビルディング本部の千代田開発部で仕事をしています。それまでは住宅事業本部のマンション開発に携わり、まちづくりという点では最後に芝浦アイランドを担当しました。通常、分譲マンションは引き渡したらディベロッパー側はほとんど関わらないのですが、それではいけないと。三井不動産では大きなまちづくりに「経年優化」をテーマに掲げて取り組んでいます。時が経てば経つほどいい環境になっていくように、その後のソフトづくりのきっかけを含めて提案していく。芝浦アイランドでは、マンションの住人を外へ連れだす仕掛けとして、最初の一年ほどは、私どもでイベントを企画して、コミュニケーションの場を設けました。現在、約3年経ちますが、徐々にコミュニティが形成されているようです。板橋にサンシティという築30年ほどの約1800戸の団地がありますが、豊かな緑地帯が広がり、住民主体のさまざまなサークルが盛んなコミュニティに成長しています。一方、そこで育った住民が、結婚してまた戻ってくるという、長い時間をかけて非常に良い住環境となった成功例で、芝浦アイランドのモデルのひとつにしました。

ビルの開発にも同じことが言えると思います。オフィスワーカーが働きやすい環境を整えることは第一ですが、大きな開発では、まちづくりという面で、いろいろな人に来てもらうことも大切です。ただ騒がしいだけでは駄目ですが、賑わい、活気があり、そこで働きたいと思ってもらえる魅力ある環境が必要です。私どもで手がけた東京ミッドタウンのある六本木は、かつて働く場のイメージは希薄でした。東京ミッドタウンは上階にはオフィス、足下には商業施設や美術館、ライブレストランなどの他、檜町公園と一体となった緑地が大きく確保され、まちのイメージを少しずつ変えているのではないかと思います。

今の時代、ソフト面のタウンマネージメントが重要になっています。日比谷パティオでは今後展開される複合開発の事前実現、トライアルということも含め、約2年間のなかで情報発信をして認知度を高めつつ、日比谷のまちが活性化していく地ならしができればいいと思っています。

ライブコンテナでは、洋楽、邦楽問わずさまざまなアーティストが出演。写真はポップロックユニットのTOI MACHINEによるライブを楽しむ人たち

金曜の夜、仕事帰りに気軽に音楽を楽しめる

シャバダバ・ヴォーカル・グループ Pecomboによるライブ

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