BACK
連載コラム
ボタンを押して、BOOKMARKに追加できます。
BOOKMARKする

まちづくり観察記vol.4 横浜港開港150周年記念事業「象の鼻パーク」

2009年6月2日の開港記念日にオープンした「象の鼻パーク」は、象の鼻の形をした防波堤のある「象の鼻地区」にできた広場です。赤レンガパークと山下公園を結ぶ中央に位置し、「山下臨港線プロムナード」から大さん橋方向を眺めると、海に面してその足元に広がっています。象の鼻地区の再整備は、開港150周年の記念事業として計画されました。横浜市港湾局内に、再整備のための専門家チーム「象の鼻地区再整備景観デザイン調整委員会」を設置し、建築設計者を対象に、公募方式で基本・実施計画者を募りました。若手にチャンスを与えたいという市の意向により、応募には、事務所の代表者が1959年6月2日(開港100周年の日)以降に生まれた人、というユニークな条件が付けられました。提案件数51件の中からみごと最優秀賞に輝いたのが、「横浜らしい夜景を楽しむために余計なものはつくらない」をコンセプトに、照明デザインが印象的な小泉アトリエの案でした。

今回は、小泉雅生氏(1963年生まれ)とコラボレートした照明デザイナーの東海林弘靖氏(有限会社ライトデザイン)に、「象の鼻パーク」の照明デザインについてお話をうかがいました。東海林さんには、『Nelsis-ネルシス』Vol.2「クリエイターを惹きつけるアルミの魅力」でご登場いただいています。

単純な仕掛けでダイナミックな景色をつくる

東海林弘靖 ライティングデザイナー/ LIGHTDESIGN INC.代表
1958年生まれ。工学院大学・大学院修士課程建築学専攻修了。国際照明デザイナー協会(IALD)プロフェッショナル会員。美術館、図書館、コンサートホールから商業施設、住宅まで人間生活にかかわる全ての空間の照明デザインを行っている。 著書に、「デリシャスライティング」(TOTO出版)など。
www.lightdesign.jp

2006年秋に横浜市が主催する象の鼻地区再整備事業のプロポーザルが行われ、最終段階5チームの中から小泉アトリエが選ばれました。小泉さんは、横浜という場所では夜の時間が昼間以上に大切だということを認識されていて、だからこそ、プランの段階から照明デザインに参加してほしいとお誘いがありました。小泉さんとは以前所属していらしたシーラカンス時代にお会いしたことはありますが、一緒に仕事をするのは今回が初めてでした。

厳しい審査員の面々でしたが、全員一致で選出されたと聞きました。その理由に、ほとんど建築物をつくっていなかったことがあったようです。大がかりな建築的操作をせず、この場所の意味するところを素直に出せたことがよかったのだと思います。

具体的には光のスクリーンパネル(材料:FRPと鋳鉄のグレーチング)が、大きな円弧を描いて並べられ、復元された象の鼻防波堤のアールにゆるやかにつながって、船溜まりの空間が感じ取れるものになっています。上から見ると地上絵のようでもあり、ランドマークタワーや大さん橋からでもエリアが認知できます。やわらかいもので大きな風景をつくった点が評価されたのだと思います。

そしてこのスクリーンパネルの光は、時間の中でゆっくり表情を変えていきます。照明としてはこのスクリーンパネルをメインにして、なるべく他の照明は抑え、ポール灯もできる限り立てないようにしました。象の鼻地区に立つと、みなとみらい地区のランドマークタワーや観覧車、ライトアップされた赤レンガ倉庫など周りの夜景がきれいに見えます。そこで象の鼻パークはあまり明るくせず、むしろ暗いことで周りの夜景を楽しんでもらうことにしたのです。

復元された象の鼻防波堤部分。クラシックなポール灯が懐かしい港の風景をつくる
開港の丘から赤レンガ倉庫を望む。視界を遮るものがないので、昼間でも広々とした港の風景を楽しむことができる
リズム感をもって並べられたスクリーンパネル。昼はオブジェのように広場に表情を与え、夜は光の道しるべとなる

こちらのおすすめ記事もいかがですか?