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連載コラム
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まちづくり観察記vol.3 新宿マルイ本館屋上庭園「Q-COURT」

2009年4月、「新宿マルイ本館」がオープンしました。進化する女性をターゲットにしたライフスタイルファッション館と銘打っており、ファッションに限らず、カルチャースクールや気持ちのいいレストルーム、カフェなどが設けられ、一日中楽しく過ごせるようになっています。さらに、屋上には都内最大級の英国式屋上庭園「Q-COURT」も。8階から階段を上ると緑豊かな庭園と青い空が広がり、都会とは思えない安らぎの空間が演出されています。

この屋上庭園の監修・設計を担当したのが、『Nelsis-ネルシス』vol.8で登場していただいたE.M.I.PROJECTの二見恵美子さんです。今回は、「Q-COURT」について紹介します。

さまざまな問題を乗り越えて

ランドスケープ アーキテクト(景観デザイナー) E.M.I.PROJECT代表
二見恵美子さん 京都光華女子大学客員教授

マルイ屋上庭園の設営にはさまざまな経緯と関係者の苦労がありました。当初の建築計画では、屋上はスポーツスタジオにするという予定だったと聞いています。企画会議を進めるうちに、地球環境保全問題が高まりを見せるいま、新宿という立地も考慮して、建築全体を緑化するほうが社会貢献度は高く、企業のイメージアップにもつながるといった経営陣の積極的な要請が出てきました。そこで、計画を変更するからには、屋上は単なる緑化ではなく本格的な庭園を造ろうということになったのです。

しかし、屋上を庭園にするには数々の問題を抱えていました。まず荷重の問題をクリアするという難題です。現況では1㎡あたり100㎏の荷重に耐えられる建築計画ではありませんでした。かといってこの時点で建築計画を変更すると建築許可申請をやり直さなければならない。となると工期が間に合わなくなる等々です。

1階ファサード緑化。屋上庭園だけでなく建物全ての緑化を手掛けた。白い壁面に映えるシンボルツリーのマグノリア。アメリカ南部では「マグノリアの花」は自立した女性の意味を持ち、理想的な女性像として例えられるそう

今回のマルイ新築8階建ては新宿のメインストリートにあり、伊勢丹デパートの対岸といった立地での重要なグランドオープンです。プレス発表の日程も決まっている以上、工期を遅らせることはできません。そこで、屋上庭園の設計はデザイン先行より、まず屋上のどの部分に荷重をかけられるかといった建築設計と睨み合わせ、動線計画→ゾーニング→デザインといった手順で進めました。

この設計では中心に荷重をかけられないので緑の固まりは周囲に持ってくる計画としました。庭園の周囲に棚をめぐらせ、さまざまなツル性植物で室外機などの狭雑物を覆い、棚の上から見える景観は美しい青空だけが見える設計にしました。部材には地球環境にやさしい自然素材・塗料にこだわり、木製を採用しましたが、新宿には高層ビルが林立しており、この屋上もビル風の影響で突風が風速25m以上にもなることがあります。ですから木製柵はそれに耐えられるように、通常より木部を厚くし別注品を製作しました。

建築許可申請後に屋上庭園を造ることになりましたから、ほかにもいろいろな問題が発生し、納期、工期ともにハラハラドキドキの連続でしたね。

かわいらしい赤いベンチ。各コーナーにはスタイルの違うものがテーマにそって置かれている

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