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連載コラム
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わたしを巡る風景vol.1 団塚栄喜さん アースケイプ代表取締役

人々の暮らしの空間を豊かに彩るランドスケープデザイン。この連載では、ランドスケープデザインに第一線で関わっている専門家の方々に、ご自身の景観にまつわるお話を伺います。
第1回目は、2007年グッドデザイン賞を受賞したラゾーナ川崎、ららぽーと豊洲を手掛けたランドスケープアーティストの団塚栄喜さんです。

アースケイプ代表取締役
団塚 栄喜
(だんづか えいき)

ランドスケープアーティスト。1963年生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。2000年、(有)アースケープ設立。
作品は晴海トリトンスクエア、丸の内北口ビルディング(丸の内オアゾ)みなとみらいビジネススクエア、神奈川県立保健福祉大学など多数。品川セントラルガーデン(ランドスケープアート)、ラゾーナ川崎、アーバンドック ららぽーと豊洲(ランドスケープデザイン)はグッドデザイン賞を受賞。

――どんな風景が心に残っていますか

原風景といえば、幼少の記憶が強く残っていますね。大分県佐伯市の大入島というところで生まれ、4歳頃まで過ごしました。「団塚」という名字が多く集まっている地域で、家を出ると海が広がっているという環境でした。親の実家があるので、その後も度々訪れていたゆかりの地です。

さっとペンを走らせ、思い出の風景をイラストで説明してくれた

海沿いに、大きな岩があったんですが、その上に盆栽のような立派な松が植わっていた。そこが大好きで、海と松を有した岩の風景をよく眺めていました。その50m程先には防波堤があって、魚や蟹を捕まえに行っていました。僕はコンクリートの構造物が好きで、よく作品にもしますが、このコンクリートの防波堤が、自分のものづくりの原点になっているような気がします。

海と暮らし、その中間にある防波堤は、豊かな自然と人々をつなぐ役目を担っている。自分の作品も自然と人の中間にあるものであり、それによって自然を感じられるようなしつらえを意識しています。これまで、そんなことは考えてもみませんでしたが、改めて思い出すと幼い頃の風景が、僕のコンセプトとして作品に表れているようです。

――なぜランドスケープデザインに携わることになったのですか

長い間、関根伸夫さんがなさっている(株)環境美術研究所にいました。関根さんは美術的側面から都市の環境整備について取り組んでいる方で、僕はそこで「自分にとっての環境美術とは何か」を模索していました。はじめは彫刻をやっていたんですが、いろいろな作品をつくっているうちに点としての彫刻よりもその連続の線やつながる面、さらには広場を越えた都市へと表現のスケールが広がっていき、ランドスケープデザインをやりたいと思うようになっていったんです。

大分県佐伯市の平和公園や、これは実現しませんでしたが長野オリンピックの駅前公園が最初に手掛けたランドスケープデザインといえるでしょう。僕にとっては彫刻もランドスケープデザインも同じ作品づくり。空間の仕事は、出来上がったときのインパクトが強く影響力が大きいのが魅力のひとつですね。

2007年グッドデザイン賞を受賞した「ラゾーナ川崎」

――一番思い出深い作品はどれですか

どの仕事もそれなりに長い時間をかけているので、これまで手掛けたものは全部、印象深いです。その中でも「アーバンドック ららぽーと豊洲」のランドスケープデザインは、出来上がった後のインパクトが一番強かったと言えるかもしれません。

作品の形としては思った通りに仕上がったんですが、そこで遊ぶこども達の反応が想像以上でした。浮き輪のようなベンチを置いたり、トラックのコースを思わせる白いラインを引いたりと、こども達が遊びたくなる仕掛けをつくったので、ある程度は楽しんでくれると予想していたんですが、実際はそれを越えていました。こどもがダッシュし続けている。ずっと、はしゃいでいて、こんなに喜んで遊ぶとは思っていなかったので、すごく嬉しかったです。

ららぽーと豊洲では、大人もこどもも各々お気に入りの場所に行って、好きな時間を過ごせるような空間づくりをしました。緑を配したり、水をはったり、ベンチを設けたりと、いろんなアクティビティを通してつくったので、こどもだけを意識した訳ではなかったけれど、こどもが喜ぶ場所というのは、大人も楽しそうにしているのを見て取ることができました。こどもの笑顔をつくれることがランドスケープデザインにも大切なのだと思います。

2007年グッドデザイン賞を受賞した「アーバンドック ららぽーと豊洲」

――今後について教えてください

最新作は、2008年3月に完成予定の「アーバンドック パークシティ豊洲」です。ららぽーと豊洲に隣接する1476戸の大規模マンションのランドスケープデザインで、二十四節季をテーマに設計しました。一年を24の季節に分け、その瞬間に最も見頃を迎えるように演出を凝らしたプライベートガーデンです。例えば、二十四節季のひとつ「清明」は桜がきれいな時期なので、床に龍水紋を描き、そこに桜の花が舞い散る瞬間の美しさを表現しました。「寒露」は10月始めで、その頃に盛りのキンモクセイを植えてあるんですが、木の前に壁があって実際には花が見えない。香りで、その季節に気づいてもらう。二十四節季を通じて日本の美を楽しんでもらおうという趣向です。

ハーブマン基金のためにつくられたTシャツを着て

仕事のほかに、2001年から「ハーブマン基金」というボランティア活動も行っています。パキスタンやネパール、タイなどの発展途上国のこども達のためにフィールドアスレチックやツリーハウスなど、プレイグラウンドをつくっているんです。これまで取り組んでいるプロジェクトから生まれてきた作品の一部をオリジナルグッズとしてホームページ(http://www.earthscape.co.jp/)上で販売し、その売上から出た利益を活動資金としています。アースケイプの社員旅行はボランティア。お金が貯まると現地に出掛けて、地元のこども達や親たちと一緒になって、壊れても自分たちで作り直せるような仕組みのプレイグラウンドをつくって帰ってきます。

これからは、仕事でも海外で活動してみたいですね。特にドイツやオランダなどのヨーロッパで。自分の作品がどれくらい通用するのか試してみたいです。

ボランティア活動
「ハーブマン基金」

ネパール

パキスタン

タイ

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