BACK
連載コラム
ボタンを押して、BOOKMARKに追加できます。
BOOKMARKする

首長・設計者インタビュー世界文化遺産になった平泉を、東北復興の光に(岩手県平泉町 菅原正義 町長 談)

書道家・武田双雲氏による「平泉」の文字が入ったオリジナルワインを持つ菅原正義平泉町長

2011年6月26日、パリで開催されたユネスコの第35回世界遺産委員会において全員一致で「平泉の文化遺産」が世界文化遺産に決定した。2008年に見送られてから3年、「浄土思想」を軸に対象を絞り込んでの再挑戦で、ようやく悲願が達成した。

菅原町長の筆による復興の決意が掲げられている

3月11日の東日本大震災以降、被害の大きかった沿岸部への支援を続けている平泉町では、この明るい話題で、復興を目指す東北の励みになりたいと願う。

2010年より首長を務める菅原正義平泉町長に、「世界遺産のまち平泉」のこれからについてお話をうかがった。

震災で落ち込んだ東北に活気を

二代藤原基衡が造営した毛越寺庭園。
往時には堂塔40、僧坊500もあったとされる日本を代表する浄土庭園
毛越寺の立石が先の震災で倒れ仮補修中。

3月11日の震災で、平泉も道路や下水道は当然被害がありましたが、建物の被害はほとんどありませんでした。中尊寺の本堂の壁に少しひびが入ったということですが、一般の住宅でもその程度、あるいは屋根瓦が若干落ちたくらいで済みました。3年前の岩手・宮城内陸地震のときも平泉はほとんど被害がなかったことを考えると、800年前、ここに居を構えた藤原清衡はじめ先人たちの知恵に驚かされます。

毎年5月のゴールデンウィークに開催する「春の藤原まつり」は、震災後ということもあり、恒例の「東下り」行列を中止しました。そのためか、今年の来訪者は例年より85%減という閑散としたものでした。役所に勤めてから数十年、こんなに人出が少なかったのは初めてのことです。まつりの行事内容を減らした分、できた時間で、ほかの都市の祭りを見学に行ってきました。おかげさまで、バリアフリーへの配慮や観光ボランティアなど、勉強になることがたくさんありました。平泉でも車いすを10台寄贈してもらうことになっていますが、学んできた経験をうまく生かしたいと思っています。

そうしたなか、世界遺産になったことで7月以降、個人の来街者は確実に増えています。岩手県交通の「るんるん」という観光用の巡回バスが運行していますが、いまはラッシュ並みの混み具合です。9月には、世界遺産登録の記念イベントが予定されているので、今後も増えることを期待しています。

震災後、東北は精神的にも経済的にも落ち込んでいます。そのなかで平泉の世界文化遺産の正式登録は明るい話題です。津波で多くの方々が命を落とし、まちが全部流されたところもあります。いま、復興に向かって一生懸命生きている人たちにとって、一筋の光になればという思いです。

特に観光という面では、平泉は集客の役割が期待されています。たくさんの人に来ていただき、被害の大きかった沿岸部の復興のようすを見て、沿岸部の生産物を買っていただく。沿岸部の首長さんたちとも情報を交換しながら、地域おこしを連携して行っていく予定です。

震災後減少した観光客が世界遺産登録後、例年を上回る勢いで増えてきた(毛越寺)
毛越寺では毎年5月の第4日曜日に曲水の宴が行われる。
平安絵巻さながらの優美さが人気(写真:平泉町提供)

こちらのおすすめ記事もいかがですか?