BACK
連載コラム
ボタンを押して、BOOKMARKに追加できます。
BOOKMARKする

家の知/討議 第8タームvol.35 “新しい公共性”(2/3) 工藤和美×千葉学×真壁智治

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟

次は工学院大学八王子キャンパスの総合教育棟という新しい校舎です。住宅から大学となりますが、ここでも考えていることは共通しています。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

同じ敷地内には、山本・堀アーキテクツが設計された「工学院大学八王子キャンパス18号館(スチューデントセンター)」、工学院大学の澤岡清秀先生が設計された「工学院大学八王子キャンパス15号館(Cキューブ)」という講義棟があったりします。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ
工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

キャンパス全体は、八王子の斜面地に南北に伸びていて、今回の計画はその一角に建てられたものです。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ
工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

ここで僕たちは、「人の集まり方をデザインする」ことを大きなテーマとしました。大学ってどんな場所なのかを改めて考えてみると、1対1の論文指導もあれば、何百人規模の講義もある。そうかと思えば4、5人程度のゼミもあるわけです。そこでは人がさまざまに集まることで、いろんな知識や技術が伝達されていくわけです。このようにさまざまな規模の人の集まり方が展開するのが、大学の面白いところなのです。しかし、従来の大学の建築は、そういったことが体感できる空間にはなっていません。そのようなことを考えながらスタディを重ね、上のようなプランにたどり着きました。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ
工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

このように、大学内のさまざまな人の集まり方を考えながら、一方でキャンパス全体のことも考え続けました。キャンパス全体における敷地のことを考えていくと、この敷地の4つの角が意外と重要ではないかということに気付きました。写真は北東側の角につくったキャンパス・コモンと呼ばれる広場です。キャンパス全体を貫く南北の動線と、キャンパスを東西に貫くキャンパス・モールが交差するところは、斜面地にとっては貴重な平場になると考え、この広場をつくりました。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ
工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

さらに周辺から道を引き込むようにして、校舎の真ん中には、風車型をしたパサージュと呼ぶ場所をつくりだしています。右の写真のように基本的に教室同士は向かい合う関係になっています。研究室同士も向い合っていて、お互いに授業をやっている姿や、研究をしている姿が何となく目に入ってくる。通常大学では教室に入ったら、隣の授業のことは見えないのですが、ここではお互いがいつも窓の外に見えてくるのです。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

プランで言うと、いわゆる片廊下型の建物がL型に折れ曲がって背中合わせに寄り添っているような建物です。けれども、部屋の大きさに応じて、階高も自由自在に変えています。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ
工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

左の写真は、「工学院大学八王子キャンパス18号館(スチューデントセンター)」のある北側から見た、一番大きなパサージュです。

真ん中を通り抜けているパサージュから、「工学院大学八王子キャンパス18号館(スチューデントセンター)」を見ると、このようにつながっています。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

パサージュの一番下は、このようになっています。路地的な空間です。このような場所からも、授業の様子が目に飛び込んできます。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ
工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

パサージュはキャンパスのさまざまな場所をつなぐ役割を果たしていますから、キャンパスのハブ的な役割もしています。お互いに向かい合うと常に教室から別の教室が見える。こういう関係があちこちで発生している状態になっています。実際に行ってみると、あちこちで授業をしている風景が一堂に会していて、これまでありそうでなかった空間が生まれていると思います。もちろん自由に、ひとりで過ごすこともできるのですが、それでも大学のあちこちで起きていることを、最大限に感じることができるのです。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

もうひとつ、せっかく新しく建築学部ができるのだから、この建物自体が教材になるようなつくり方にしようとも考えました。つまり、単に授業を受けるだけではなく、建物がテキストとして使えるような建築のあり方はないか、と思ったのです。そこで例えば、構造は大スパンの方はPC板を使ったり、一方は在来工法をつかったり。ファサードも、パサージュ側はスチールサッシにして、広場側はアルミサッシと有孔折板の組合せにしたり。窓などにもさまざまな開閉形式をあえて採用しています。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ
工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

この写真は、広場側のアルミサッシの外側につくった有孔折板のスクリーンです。閉鎖と開放のバランスをとるために、ここでは、孔のデザインを野老朝雄さんというグラフィックデザイナーにお願いしました。野老さんは、とても大好きなデザイナーです。極めて単純な幾何学による円の配置によって、実に美しく、見たこともないような図形が生まれています。こういうものも、ひとつの教材となるわけです。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

廊下に面した所も、建具は全部開放して自由に使えるような場所になっていて、木建がありスチールサッシがあり、アルミサッシがあります。似たような部屋でありながら、実に多様な場が生まれています。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟:イメージ

夜はこのような感じです。

※「工学院大学八王子キャンパス総合教育棟」写真はすべて、西川公朗

  • ゲスト 工藤和美(くどう・かずみ) 建築家/東洋大学建築学科教授/シーラカンスK&H代表取締役

    ゲスト

    工藤和美(くどう・かずみ)

    建築家/東洋大学建築学科教授/シーラカンスK&H代表取締役

  • ゲスト 千葉学(ちば・まなぶ) 建築家/東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授/千葉学建築計画事務所主宰

    ゲスト

    千葉学(ちば・まなぶ)

    建築家/東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授/千葉学建築計画事務所主宰

  • モデレーター 真壁智治(まかべ・ともはる) プロジェクトプランナー/M.T.Visions

    モデレーター

    真壁智治(まかべ・ともはる)

    プロジェクトプランナー/M.T.Visions

こちらのおすすめ記事もいかがですか?