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連載コラム
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家の知/討議 第7タームvol.33 "作り手"と"住まい手"の再考(3/3) 小嶋一浩×加茂紀和子×真壁智治

今、学生たちに問いかけること

真壁:今日は、「"作り手"と"住まい手"の再考」ということで、お話をうかがってきましたが、最後にそれぞれに教育の観点からお話をうかがえますでしょうか。今日お話したような2000年以降の建築の動きということも含めて、教える側として学生たちに伝える際に、特に意識されていることはありますでしょうか。

加茂紀和子

加茂:私は大学で研究室を持っていません。単発的に授業の課題を教えることがほとんどですが、2年生で住宅の課題などを教えていて、そこで感じるのは、やはり学生たちは身体から考えないというか、感じていないように思うんです。わかりやすく言うと、なんとなく間取りで考える子が、大半を占めているんですね。もちろん高学年になっていければ変わっていくのだと思いますが、一般的社会性から、モノを考えることをスタートすることを、結構意識的に伝えているかもしれませんね。

小嶋:でもなかなか簡単には変われないでしょう(笑)。

加茂:そうなんですよね。変わってくれない(笑)。

真壁:難しい。いや、大学でこう習いましたから、これは間違いございませんっていう時代では、ありませんからね。

小嶋:また、今、最も大事なことを、大学という場のカリキュラムなどでは、とてもすべてを教え切れないですよね。そういう意味では、僕は、被災地の支援プログラムを学生たちとやっていると新しい発見もあるんです。今の学生たちが持っている、ある種のナイーブさというものが、東北の被災した、お年寄りが多いところに行って、聞き込みなどをさせていると、本当にしっかりと誠実に動いているわけです。さぼるどころか、能動的に現地の方々の中へ入っていて、聞き取りをしている。これも大学の厳しい設計スタジオで課題をこなしながらなので、相当大変なんです。そんなに旅費を出せないから、学生たちは基本的に夜行バスで東北へ行くのですが、それでもみんな行きたがるんですよね。だからそれは、今の優しい世代の持っている新しい可能性なんだと思います。

真壁:なるほどね。そうした学生たちの資質が、これからの新しい作り手と住まい手との感覚共有を伴う建築の在り方の局面を切り抜いていけるようになると素晴らしいと思います。これは「臨床建築」を予感させるものですね。

加茂:そういう経験があると、全然違いますよね、きっと。

小嶋一浩

小嶋:その一方で、「海外で戦えるようにトレーニングをしておかないと駄目だよ」ということは、これは理科大にいたころから常に言っています。日本では、小さいものを一品生産で作ろうということについては、非常にクオリティが高い。そういう時のためのクライアントとのインタラクションも、もちろん必要です。だけど、そこからあまりに戦いのフィールドのターゲットを小さくしすぎていてはいけない。つまり若い大学院生ぐらいの学生であれば、何万平米というプログラムをある期間でまとめあげるするトレーニングをやっておく必要もあると思うんです。日本では、そういう規模の仕事のリアリティはないかもしれないけれど、フィジカルトレーニングはやはりしておかなくてはいけませんよね。

真壁:大きなものを構想し、具体化していく緻密な構築力、それと小さなものに対応していく繊細な感性と感覚共有を実現していくためのスキル開発が、学生といえども今入用なのでしょう。
小嶋さん、加茂さん、本日はどうもありがとうございました。

小嶋一浩、加茂紀和子

  • ゲスト 小嶋一浩(こじま・かずひろ) 建築家/横浜国立大学大学院Y-GSA教授/C+A(シーラカンスアンドアソシエイツ)共同主宰

    ゲスト

    小嶋一浩(こじま・かずひろ)

    建築家/横浜国立大学大学院Y-GSA教授/C+A(シーラカンスアンドアソシエイツ)共同主宰

  • ゲスト 加茂紀和子(かも・きわこ) 建築家/ ICS カレッジオブアーツ講師/みかんぐみ

    ゲスト

    加茂紀和子(かも・きわこ)

    建築家/ ICS カレッジオブアーツ講師/みかんぐみ

  • 真壁智治(まかべ・ともはる) プロジェクトプランナー/M.T.Visions

    モデレーター

    真壁智治(まかべ・ともはる)

    プロジェクトプランナー/M.T.Visions

第7ターム 家の知/討議 動画配信

テーマ:「"作り手"と"住まい手"の再考」 at Coelacanth and Associates tokyo
小嶋一浩×加茂紀和子×真壁智治

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