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連載コラム
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家の知/討議 第7タームvol.33 "作り手"と"住まい手"の再考(3/3) 小嶋一浩×加茂紀和子×真壁智治

非投資都市だからこそ生まれる可能性

真壁:これまで住宅と集合住宅についてもプレゼンしていただきました。住宅は大まかに、戸建て住宅と集合住宅があります。戸建て住宅については、建築家たちの取り組みから、まさに使い手と住まい手の、ある種の共有化の作業というものは生まれていると思います。賃貸にしても、今日のプレゼンテーションにあったように同様の流れがあると思います。ところが、分譲の集合住宅というものは、やはりそういう構造化がないまま、ただ資産価値のような側面だけでがんじがらめになって、住まい手のニーズとの乖離も著しいですよね。
要は、次に進むには、何か分譲住宅のありようというか、新しい構造を盛り込まないとだめだろうと思うのです。少し話しが大きいのですが、分譲集合住宅について、どのようにお考えですか。

小嶋:2つの話があります。ひとつはコーポラティブハウスです。僕らは何度か設計したことがあるのですが、コーポラティブの場合は大抵、フォーマットをつくって、そのフォーマットの中へエンドユーザーの要望が、どんどん入ってきます。一戸ずつすべてが違うわけですから、戸建て住宅を何軒も設計するのと同じ労力を必要としますね。

下北沢で設計したときは、14戸同時に設計しました。もちろんオーナーは14人。コーポラティブに住もうとするような住まい手に、こだわりのない人はいません。だから、僕らがデフォルトで設計したものをもっていっても、そのままでいいと言う人は一人もいないわけです。中には、お金がかかっても、いろんなチャレンジをしたいという人もいますね。ディベロッパー的ではない、こういう流れには、ひとつの可能性があるのではないかと思っています。
もうひとつは、ディベロッパーなどによるものです。昨年の春から横浜のY-GSAに行き始めているのですが、関内エリアに増加し始めたタワーマンションが、もう、それまでの街の雰囲気が台無しになってしまっていて、この状況をどう考えればいいのだろうと思うわけです。これは東京でいったら、銀座にタワーマンションが続々とできているようなものですよね。ただ、銀座はまちづくり会議のようなところが中心となって、あのエリアにはタワーをつくるのは、やめておこうとなったようです。コンパクトシティだという意味では、悪くもないという考え方もありますから、やみくもに禁止とは言えないのかもしれませんが。

真壁:それに合わせて、僕が問題だと思うのは、家を買う側の選択肢がまだまだ認識が狭いように思うんです。自分たちが求めているものは、接地性の強いタウンハウス的なものなのか、それともタワーマンションなのか。更にコーポラティブハウスなのか、コレクティブハウスなのか。逆に実際は、その選択肢が多様になってきているわけだから、これから住まい手が家に対してもつイメージも、まだまだ変わっていくんだろうと思いますが、問題は供給側です。

加茂:ひとつには、共有部分は自分たちの領域ではないということに、とても違和感を覚えます。共有部分には、自分たちは決して手を付けてはいけないし、はみだしてもいけない。要は自分の生活領域の中であっても、共有部分は決して自分の手垢も何も付かないような状態で維持すべきという。規模に差はあると思いますが、ある程度のはみ出しがあるのがあるべき姿だと思うんです。
私も関内のタワーマンションの足下を歩いたことがあります。普通の団地であれば、まだワイワイしているような環境の中で、タワーの足下はお店も閉まっているし、日曜日でも遊歩道ではまばらで、これは人が住むところなのかと考えてしまうくらいでした。例えば、一人暮らしで下に降りてきて、ちょっと飲みに行こうと思ったとしても、その界隈は、完全にスケールアウトしているわけです。それを見た時に、やはり愕然としました。小綺麗ではあるけど、寒々しい。もちろんコンパクトシティとしての見方もありますが、やはり考えなくてはいけないと思います。

小嶋一浩

小嶋:関内エリアは、日本の中では最も建築物による都市性がある所なのに、それがタワーが割り込んでくると街づくりができなくなってしまう。
今の日本のタワーマンションは、投資では動いていないそうです。海外を見ると、リーマンショックまでは、ドバイや、パナマなど、そんなに人口の多くない都市に大量のお金が流れ込んで、東京とほとんど変わらないようなスカイラインがつくられています。けれど、夜景をみると電気がほとんどついていない。つまりタワーのほとんどは、グローバルマネーの投資なんですね。
ところが東京は、地震などのリスクが高くて誰も投資しようと思わないわけです。それなのにタワーマンションが次々立ってみんな住んでいる、こんな状況は世界中でも希有な例だと思います。
そして、先ほど加茂さんから共用部の管理の話がありましたが、これは投資のためには必要なことなんですね。管理されてないと投資物件にならない。けれど、もはや東京のタワーが投資用でないのあれば、もっと崩してもいいはずだとも考えられるわけです。

真壁:これまでの原則というものが、東京はもう相当弱くなっているんじゃないかなということですね。

小嶋:そうです。だから、決断さえすれば、もっと面白いことができるはずなんです。きちんとした答えになっていないかもしれませんが。

真壁:分譲集合住宅に対する需要者側が、もっと住まい方のシビアなイメージを持たないと、まずい時期に来ていると思います。つまり、集まって住む暮らし方の具体的なイメージということです。建物の形状、形式、立地でまるっきり異なる暮らし方が展開されるわけですからね。

  • ゲスト 小嶋一浩(こじま・かずひろ) 建築家/横浜国立大学大学院Y-GSA教授/C+A(シーラカンスアンドアソシエイツ)共同主宰

    ゲスト

    小嶋一浩(こじま・かずひろ)

    建築家/横浜国立大学大学院Y-GSA教授/C+A(シーラカンスアンドアソシエイツ)共同主宰

  • ゲスト 加茂紀和子(かも・きわこ) 建築家/ ICS カレッジオブアーツ講師/みかんぐみ

    ゲスト

    加茂紀和子(かも・きわこ)

    建築家/ ICS カレッジオブアーツ講師/みかんぐみ

  • 真壁智治(まかべ・ともはる) プロジェクトプランナー/M.T.Visions

    モデレーター

    真壁智治(まかべ・ともはる)

    プロジェクトプランナー/M.T.Visions

第7ターム 家の知/討議 動画配信

テーマ:「"作り手"と"住まい手"の再考」 at Coelacanth and Associates tokyo
小嶋一浩×加茂紀和子×真壁智治

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