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連載コラム
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家の知/討議 第6タームvol.30 家のスガタとふるまい(3/3) 小泉雅生×藤本壮介×真壁智治

  • 小泉雅生(こいずみ・まさお) 建築家/首都大学東京大学院教授/有限会社小泉アトリエ代表

    小泉雅生(こいずみ・まさお)

    建築家/首都大学東京大学院教授/有限会社小泉アトリエ代表

  • 藤本壮介(ふじもと・そうすけ) 建築家/藤本壮介建築設計事務所代表

    藤本壮介(ふじもと・そうすけ)

    建築家/藤本壮介建築設計事務所代表

  • 真壁智治(まかべ・ともはる) プロジェクトプランナー/M.T.Visions

    真壁智治(まかべ・ともはる)

    プロジェクトプランナー/M.T.Visions

環境工学×デザイン

平林応急仮設住宅, 大船渡市末崎町(photo=jetalone) 平林応急仮設住宅, 大船渡市末崎町(photo=jetalone)

藤本:僕の建物って、環境という言葉と一番相いれないと思われがちじゃないですか。けど僕自身は、小泉さんがお話ししていたような人間が住む時の住環境全般にとても興味があるんです。周りにあるものから家具や壁、誰かと住むということ、さらに日差しや温度、風というものを含めて人間を取り巻くもの全てが環境になっている。人間を取り巻くすべてにからオーガナイズされているものこそが建築だと考えているので、これからは、いわゆる環境工学的なものも、何とか自分の方法の中に取り入れていきたいと考えています。けれども、正直言うと、まだうまくデザインと一緒になれていないところがあるんです。
冒頭に仮設住居の話も出ましたが、僕は昨年(2011年)の11月に今年のベネチアビエンナーレに出展させていただく関係で、伊東豊雄さんたちとはじめて被災地へ行きました。そのとき特に感銘を受けたのが、そこに暮らす人々のたくましさでした。おそらく仮設住居に住み始めて数ヶ月しか経っていないのに、例えば、玄関の前に風除室を造ったり、棚のようなものを作り付けてあったり、干し柿が干してあったり、お花が植えられていたりする。そうすると、仮設住居間の路地に妙ににぎわいがあふれ出ているんです。

今、提供されているような多くの仮設住宅は無味乾燥で住民を閉じ込めてしまうようなデザインになっているけれども、住民の方が頑張って、仮設住宅そのものを上回ろうとしている。もちろん全ての人がたくましく元気に生きているわけではないと思います。けれども、そういう人々の姿を見て、もし私たちが仮設住宅に何か提案ができることがあるとするならば、そういった場所に対する関わりのようなものを受けとめて、「ここでは何か色々とやってもよさそうだ」ときっかけを与えられるような場所をつくることなのかもしれないと感じたのです。その建物に関わった瞬間から、何か作ってしまうような感覚。だから、今までは建築とは関係ないと思われていたような、できたものに対して、どんどん関わっていけるような何か。そこを含めた建築の提案というものがあってしかるべきだと思います。

小泉:住まいや街や家族を失った中で、最初の一歩を踏み出す。そのために建築的なお手伝いをするというポイントがとても大事な気がします。だから、仮設住居の提供についての藤本さんのお話もそうですし、提供するもう少し手前のところからお手伝いしなくてはいけないのかなと考えています。

情緒障害児短期治療施設:内観写真(photo=阿野太一) 情緒障害児短期治療施設:内観写真(photo=阿野太一)

藤本:そうですよね。例えば、先ほどの小泉さんのプレゼンでもあった"ムラをつくる"ということには、僕もすごく共感していて、仮設住居もやはり六畳一間ではなく、広いところ、狭いところ、何か置けそうな所と空間にムラがあった方が、使い手の発想がわき出てくると思うのです。

僕も昔建築を始めたばかりのころ、精神医療施設をいくつか設計しました。普通、病院にはデールームという共有のリビングのような場所があるのですが、ただ僕はそれがどうも嫌だったんです。というのも、全員がそこに来るというのは、何か気持ちが悪い。中には大勢の所に出てこられない人もいます。けど、そういう人のために小さな部屋をつくるのもかわいそう。だから、廊下のすみっこに2、3人が集まれるような小さなコーナーを点在させました。今日はこの辺で静かにしたいとか、賑やかなときにはデールームに出てみようかとか、それこそがムラですよね。均一でない状態をつくることが、いろんな意味で大勢の人々をさまざまな形で許容できるのだとわかったのです。

小泉:そうですよね。しかし、そのムラというものには揺らぎの許容される範囲があるんですよね。僕個人としては、完全にブラック&ホワイトという極端なムラはたぶん駄目で、ある範囲で収まっているムラは、良い。そういったムラがつくりだすレンジをどのように説明し、どう納得してもらうかということが、デザインすることそのものになってくるわけですね。

藤本:さきほどのような病院の場合は、個室は基本均等に作られています。でも仮設住居の場合は、家一つひとつが個人のもので、外側にもスペースが広がっていると、そこが広いとか狭いとか、明るいとか暗いとか、微差に皆敏感になりますよね。そうなってしまうと家単体の話になってしまって、周りの共有部分も含めた住環境全体として何が良いのかという議論にならない。

小泉:だから許容できる範囲のムラをうまく説明することが必要なんですね。

第6ターム 家の知/討議 動画配信

テーマ:「家の"スガタ"と"ふるまい"」 in LIXIL:GINZA
小泉雅生×藤本壮介×真壁智治

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