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連載コラム
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家の知/討議 第3タームvol.21 2010年、建築家が考える「エコハウス」(3/3) 竹内昌義×難波和彦×真壁智治

  • 竹内昌義(たけうち・まさよし)東北芸術工科大学教授/みかんぐみ

    竹内昌義(たけうち・まさよし)

    東北芸術工科大学教授/みかんぐみ

  • 難波和彦(なんば・かずひこ)東京大学教授/難波和彦+界工作舎

    難波和彦(なんば・かずひこ)

    東京大学教授/難波和彦+界工作舎

  • 真壁智治(まかべ・ともはる) プロジェクトプランナー/M.T.Visions

    真壁智治(まかべ・ともはる)

    プロジェクトプランナー/M.T.Visions

「箱の家」からゼロ年代環境共生住宅へ

真壁:次は、難波さんのお話をうかがいながら、議論を深めていきましょう。

難波:まずは「箱の家」の話からさせていただきます。書籍『建築の四層構造』(INAX出版)にもまとめているのですが、建築の四層構造ということを常に考えてきました。四層とは、建築を物理的側面、エネルギー的側面、機能的側面、記号論的側面の四つの視点でとらえることを指します。この四つの層は、それぞれ解決すべき問題を持っています。だから、例えば第一層の物理的側面は、材料や構造、構法として、第二層はエネルギー条件、第三層はビルディングタイプの機能的条件、第四層は形や空間の美学的条件として分解することができます。さらにそれぞれの層に対応したプログラムがあり、それを解決する技術があるわけです。つまりは、建築をつくることは表現だけの問題ではないという主張です。
 これまでの「箱の家」シリーズでは、この四層構造をコンセプトとして、構法を標準化してコストパフォーマンスを上げていこうとしたわけです。エネルギー条件ではできるだけ自然を取り入れてかつ省エネで高性能な住宅をつくる。また、一室空間にしたのは、エネルギー条件を考えただけではなく機能的な要因からくる提案です。これはどちらかというと家族の問題として独立して追求してきました。形については、やはり箱形が一番単純でつくりやすかったからです。
 基本的には「箱の家001」にほとんどの要素が入っています。吹き抜けがあり一室空間。街に対して開く。建材は標準化する。材料はメンテナンスがしやすいものを使う。断熱性能を確保する。先ほど竹内さんがおっしゃっていたのと同じ条件で、プランニングは壁を外す。一層と二層を独立させる。こうして家族が何となく一緒に住んでいる感じを箱にするということです。
 このシリーズをはじめた最初は数年の間に8つの「箱の家」をつくりました。平行して鉄骨造の住宅もつくっていて、プランの考え方はほとんど木造「箱の家」と同じなのですが、鉄骨でやるとヒートブリッジだらけになってしまうのですね。このときは、断熱性能を高めるために、床に蓄熱させたり暖房も使用しているのですが、ヒートブリッジ(注1)の影響がここまで大きいものだとは考えてもいなかった。
 その後、鉄骨造の住宅もつくりながら「アルミエコハウス」をつくる頃までには、ヒートブリッジの問題はほぼ完璧に解決できていました。このプロジェクトは、僕にとっては熱が最大のテーマでしたが、アルミの広告塔でもあるので、材料から家具まで全てがアルミでつくられています。断面やプランは、それまでの「箱の家」と同じコンセプトでつくられています。このときはじめて、アクアレイヤーという水蓄熱式床暖房システムを使いました。これは、水の入った袋を根太間に敷き詰め自然対流させたものです。こういうことも、例えば学生に「水の比熱っていくつ?」と聞くと、「1」と答える。つまり、1グラムの水を1℃上げるのに1カロリーということです。けど、続けて「石の比熱っていくつ?」と聞くと、誰も知らない。石って一見、蓄熱しそうじゃないですか。けど、蓄熱には水が一番なんです。アルミは全く蓄熱性がありませんから、ここではアクアレイヤーによる床暖を採用したわけです。
 実験住宅として実際に住んでみて決定的にわかったのは、設計者自身が住むと、ものすごい省エネ住宅になるけど、学生たちが住むと最悪だということ。つまり、人間の住まい方が伴わなくては、省エネ住宅というハードは機能しないし、問題を解決できないと思いました。窓を開けてガンガン冷暖房をつけてビールを飲んでいれば、もう省エネもくそもない(笑)。おそらくライフスタイルや生活の仕方で7割ぐらいが決まるのではないでしょうか。だから、住む人自身が学び、その建物のことをよく知るということが、とても重要だということが改めてわかったのです。
 そのあと、これまで僕がつくってきた住宅たちが、果たして環境性能を維持し続けられているのかを環境設備の専門家の先生に呼びかけて、調べ始めました。具体的には「箱の家」シリーズの100番以降そうすると、またいろんなことがわかってきた。非常に低層の建物で、床がフローリングだと冬でも暑いと言われたり。あるいは窓ガラスに関しては、庇がある南側でLow-Eガラスを使うと冬の日差しもカットしちゃうから、南面の窓ではLow-Eガラスでない方がいいとか。思ってもいなかった結論がたくさん出たのです。


左:「ココラボ環境共生住宅」A棟外観 右:「ココラボ環境共生住宅」A棟内観左:「ココラボ環境共生住宅」A棟外観
右:「ココラボ環境共生住宅」A棟内観

その後も、計画の段階から環境の研究室と共同で設計した「箱の家124」(上写真)では、PSヒーターを使った輻射暖房、暖冷房、冷房にトライして空気の対流について改めて検討してみたり。一室空間で、室内環境の見えないパラメーターを操作していくと、建築がどのように変わるかということを実験して、その結果を反映した住宅を設計したり。その先に、今回設計した「ココラボ環境共生住宅」があるのです。

図:「ココラボ環境共生住宅A棟B棟」配置図
図:「ココラボ環境共生住宅A棟B棟」配置図

これはコスモスイニシアという会社からの委託研究で、戸建て住宅のプロトタイプを実際の敷地に4つ並んだ形で設計するというものです。ここでは主に風についての実験を行いました。住宅地の場合、そこに吹き抜ける風は特殊で、下の階から入り上部へ抜けるということはほとんどありません。そういう状況の中で、いかに自然の風を住宅内に取り込み、流すかということを実際にいろいろとシミュレーションしました。それによってこの新しい「ココラボ環境共生住宅」はできています。基本的には「箱の家」と同じく一室空間になっています。

「ココラボ環境共生住宅A棟」平面図。それまでの「箱の家」シリーズと同様、一室空間でプランニングされていることがわかる。 「ココラボ環境共生住宅A棟」平面図。それまでの「箱の家」シリーズと同様、
一室空間でプランニングされていることがわかる。
図:「ココラボ環境共生住宅A棟」断面詳細図。注1:ヒートブリッジ|外壁と内壁の間にある柱などが熱を伝える現象。特に熱伝導率の高い鉄骨は、外気と室内の熱を伝えやすくなる。例えば、夏は熱がヒートブリッジを伝わり暑くなり、冬は冷気が伝わり寒くなる。このような現象が、結露の原因になり、冷暖房の熱効率は悪くなり、光熱費も高くなる。[クリックで拡大] 図:「ココラボ環境共生住宅A棟」断面詳細図。
注1:ヒートブリッジ|外壁と内壁の間にある柱などが熱を伝える現象。特に熱伝導率の高い鉄骨は、外気と室内の熱を伝えやすくなる。例えば、夏は熱がヒートブリッジを伝わり暑くなり、冬は冷気が伝わり寒くなる。このような現象が、結露の原因になり、冷暖房の熱効率は悪くなり、光熱費も高くなる。

これまで140もの「箱の家」をつくってきました。アルミエコハウスは別として、ほとんどは個人のクライアントだったので、こうして建て売りを計画するのは初めてでした。最初は4棟並んだ街並みをつくることを計画していたのですが、途中で経済的な事情があり、まずは左側の2つだけが完成しています。これは、環境の研究室と農学部木質研究室の稲山正弘さんとわれわれとの3研究室共同研究でした。材料は、群馬県のスギ材で軸組も全てスギの木材を使用しています。はじめてのことにいろいろとトライしていて、例えばこれまでの「箱の家」では屋根がほとんどフラットだったのですが、ここでは斜めに3寸勾配にしています。そうすると屋根の通気や壁の通気など、発見もたくさんありました。もちろん制約がたくさんあったわけですが、やはり民間の建て売りというものは、通常のアトリエの建築の設計に比べて3倍くらい手間がかかるということがよくわかりました。


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テーマ:「エコハウス」
難波和彦×竹内昌義×真壁智治

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