BACK
連載コラム
ボタンを押して、BOOKMARKに追加できます。
BOOKMARKする

家の知/討議 第3タームvol.20 2010年、建築家が考える「エコハウス」(2/3) 竹内昌義×難波和彦×真壁智治

  • 竹内昌義(たけうち・まさよし)東北芸術工科大学教授/みかんぐみ

    竹内昌義(たけうち・まさよし)

    東北芸術工科大学教授/みかんぐみ

  • 難波和彦(なんば・かずひこ)東京大学教授/難波和彦+界工作舎

    難波和彦(なんば・かずひこ)

    東京大学教授/難波和彦+界工作舎

  • 真壁智治(まかべ・ともはる) プロジェクトプランナー/M.T.Visions

    真壁智治(まかべ・ともはる)

    プロジェクトプランナー/M.T.Visions

徹底的シミュレーションによる世界レベルのエコハウスを

真壁:まずは、書籍をつくりあげた。それが「山形エコハウス」の基礎研究となっていたわけだけれど、しかし、実際建てるとなると、さまざまな問題が出てきたと想像します。設計期間は、どれくらいだったのですか。

竹内:書籍が出版されたのが、2009年8月だったのですが、その頃には、もうコンペに参加することが決定して、講習を受けていました。その講習を受けてから提案しなくてはいけなかったのです。2010年3月には竣工させる条件だったので、その後、約2カ月くらいで設計を行いました。とにかく時間がありませんから、実質、それまでに書籍づくりで考えていたさまざまな知識をジョイントさせながら、実際の敷地へ適合させていったような感じです。


左:「山形エコハウス」のプレゼンテーションボード。 右:「山形エコハウス」の模型。 左:「山形エコハウス」のプレゼンテーションボード。
右:「山形エコハウス」の模型。

せっかくやるのであれば、設備に関しても完璧につくりたかったので、アラップ・ジャパンにもメンバーに入っていただきました。例えば、太陽熱で採った熱とペレットボイラーをひとつのボイラーでまとめて給湯を行い、その給湯を使ってさらに暖房しているのですが、そういった設備的な検証も全てシミュレーションしていくわけです。こういったことも含めて、「山形エコハウス」の温熱環境は、木質ペレットと太陽熱温水器、それに太陽光発電という、これら3つのエネルギーをどう効率よく使用するのかということで、設計をまとめていきました。

左:「山形エコハウス」のエネルギー循環図。 右:「山形エコハウス」外観。道路に面した北西から見る。 左:「山形エコハウス」のエネルギー循環図。
右:「山形エコハウス」外観。道路に面した北西から見る。
左:庇が1000mm、1600mm、2650mmの場合、直射光をどの程度防ぐことができるのか、その温熱環境をスタディする。 右:さらに8月、9月の10時から15時を1時間ごとにスタディしたもの。 左:庇が1000mm、1600mm、2650mmの場合、直射光をどの程度防ぐことができるのか、
   その温熱環境をスタディする。
右:さらに8月、9月の10時から15時を1時間ごとにスタディしたもの。

それ以外にも、開口部の問題を解決するために、さまざまなシミュレーションを行いました。例えば、夏の時期は、どの程度窓の上部を開けると、どれくらい風が抜けていくのかというスタディをしながら、同時にトップライトの大きさが決定していったり。庇の長さにしても、春や秋の中間期に東や西から入ってくる太陽の光を、どの程度取り込み、また遮断するのかを計算しながら開口部を検討していく。 もちろん、こういったことは普段の設計でも考えていることなのですが、アラップ・ジャパンの方々に協力いただいたことで、やはりこのような徹底的なシミュレーションは、設計を決定づける根拠として、非常に助かるということがわかりました。


竹内昌義

先ほど、お話したエネルギーを有効に使うために、どう断熱性を向上させるかということについても、当初は熱損失係数Q値=1.0を目指して、グラスウール300ミリ、壁厚200ミリで、基礎断熱してというぐらいのことを考えていたのですが、実施設計が始まり、現場に入った頃に、『世界基準の「いい家」を建てる』(PHP研究所/2009)を著し、「パッシブハウス」に造詣の深い森みわさんと知り合い、相談させていただきました。そこで、日本基準ではなく、より世界基準のエコハウスを建てようという方向へ進んだのです。「パッシブハウス」とは、ドイツや北欧で実用化されている高性能な省エネルギーの建物のことです。ドイツのパッシブハウスでは、単位面積あたりの消費エネルギーが、年間15kWh/㎡以下のエネルギーとなっていることが基準とされています。だから、「山形エコハウス」は、計算上は13kWh/㎡まで行って、世界トップレベルの断熱性を持たせるよう設計しました。結果としては、まだそこまで到達できていないのですが、竣工後、実証実験を今も重ねていて、断熱性能の検証の精度をさらに上げていければと考えているところです。
木材については、山形市の木を切り出して、使っています。結果として、CO2の排出量はゼロ。さらにそれを越えて、エネルギーを生みだし、収支的にはプラスになっています。建設の構想からエコハウスの竣工までのこのような一連の作業を2009年8月に講習を受け、設計を行い、12月に着工、そして2010年3月に竣工というスピードで行ったわけです。

難波:現在は、どのように使用しているのですか。

竹内:現在は、地球温暖化防止の活動をしているNPOと東北芸術工科大学が、エコハウスの普及促進で協同して活動しています。

真壁:実際に見学はできるのですか。

竹内:月曜日から土曜日の10時から16時まで見学できます。

真壁:宿泊などの体験をすることは、可能なのですか。

竹内:そういう実験的な試みを是非してみたいのですが、いろんな責任問題がまだクリアできていなくて、居住体験できない状況なのです。

難波:このプロジェクトは環境省が関わっていることだから、つまりこれは戸建て住宅でありながら公共建築なのですね。

竹内:そうですね。まさに住宅だけど公共建築となります。

難波:僕も、1998年に伊東豊雄さんを中心として発足された「住まいとアルミ研究会」に佐々木陸朗さんと共に関わらせていただいて、その延長としてアルミニウム住宅のプロトタイプの開発を行いました。その成果として生まれたのが1999年に建てられた「実験住宅アルミエコハウス」(下写真)でした。この実験住宅には、住んでみることはできたのだけど、結局最終的には、東京大学が払い下げたけど、移築することができずに解体されることになって、全てリサイクルにしてしまった(笑)。これも公共のものだから公共にしか払い下げられないと。民間であれば、いくらでも買う人がいると思うんですけどね。「山形エコハウス」は、うまく活用されていくといいですね。

写真提供:「難波和彦・界工作舍」 写真提供:「難波和彦・界工作舍」

第3ターム 家の知/討議 動画配信

テーマ:「エコハウス」
難波和彦×竹内昌義×真壁智治

こちらのおすすめ記事もいかがですか?