BACK
連載コラム
ボタンを押して、BOOKMARKに追加できます。
BOOKMARKする

家の知/討議 第2タームvol.16 “空間”への執着、その行方 高橋晶子×小泉雅生×真壁智治

  • 高橋晶子(たかはし・あきこ)武蔵野美術大学教授/ワークステーション

    高橋晶子(たかはし・あきこ)

    武蔵野美術大学教授/ワークステーション

  • 小泉雅生(こいずみ・まさお)首都大学東京大学院教授/シーラカンスアンドアソシエイツ(C+A)

    小泉雅生(こいずみ・まさお)

    首都大学東京大学院教授/シーラカンスアンドアソシエイツ(C+A)

  • 真壁智治(まかべ・ともはる) プロジェクトプランナー/M.T.Visions

    真壁智治(まかべ・ともはる)

    プロジェクトプランナー/M.T.Visions

大事なモノと住まいのあり方

真壁智治

真壁:後は、高齢化社会ということを考えても、人々はますます何らかの社会的なつながりの中に自分の居場所を見つけていこうとする住まい方、生き方を求めるだろうと思います。一方で、ネット社会等の影響からか、直接的でリアルな関わりを求める住まい方よりは、フィクショナルでバーチャルな住まい方を好む傾向もあります。西沢立衛さんの「森山邸」は、そういったリアル/バーチャルな住まい方についてもいろいろと考えさせられるものです。また、そういった住まい方は、住まい手とモノとの関係性にも顕著に現われてくると思うのですが、いかがでしょうか。

高橋:私は子どもがいませんので、家には寝るために帰るようなものです。そう割り切れているから、家の中のモノが非常に少ないんですね。ベッドも布団を上げてしまうと動く畳となって、宴会時には4人席の場になるんです。ある時建築家が10人くらい遊びに来て、家らしくなさに驚いていましたが、こういう状態を楽しめることが、今の私にはフィットしているのです。それでも、見渡してみると、沢山ではありませんがお気に入りのモノに囲まれていたりする。

小泉雅生

小泉:家の中にお気に入りのモノを置いておくという発想をしていくと、恐らくモノを守るという意識が芽生える。そういう考えがある一方で、今だとこだわるべきものが、リアルなものではなくバーチャルなものになってしまうというのもありそうです。そうなった瞬間に、生活は相当変わるのではないかと思います。自分がどうしても守りたい大事なモノが、デジタルデータや通信機器、あるいはそれを通じた繋がりのようなものになると、住まいや空間のあり方が変わるのではないかという気がするんです。
例えば、最近、ルームシェアが増えてきています。恐らくある年代の人たちにしてみれば、見ず知らずの人たちと一緒に住むというのが、よく理解できないという感じがあると思うのだけど、若い年代の人たちからすると、携帯やパソコンがあり、自分のプライバシーを守ることができる領域 < 空間ではなく > があれば基本的に大丈夫で、それを前提に場所をシェアすることができるのではないだろうか、と。

真壁:なるほど。そこにこれまでとは違う領域感覚や境界感覚を含む、ある種の仮想空間ができあがるのでしょう。先日も引きこもりの息子がインターネットを強制的に遮断されて家族を殺してしまうような事件がありましたが、あれもそういった彼なりの仮想空間が他人に侵されたときの過剰な反応と読み取ることもできるでしょうね。

小泉:これまでとは異なる生活観が表出してきていると理解せざるを得ません。

高橋晶子

高橋:少し関係のある話題で、「出張をするときに必ず持って行くモノは何ですか?」というアンケート結果を見たことがありました。旅行をするためというよりも、自分にとって必ず必要なものということですね。このアンケートでいろんな人の回答を見ていると、何でこんなものを持って行くのだろうというのがあります。例えば、やたらと大きな人形だったり、ロイヤルゼリー、水、お守り、といったように。そこに現われる全てのモノは、人それぞれの願望と結び付いています。だから、そんな願望や欲望、あるいは記憶と結び付いたモノは、時と場合によっては、リアルな“場所”より重要なこともあると思います。

小泉:僕は、国内外に関わらず、出張先でネットがつながらないとすごく不安になるんです。逆につながると落ち着く。

真壁:私は、それはないですね。出張や旅先では、あまりネットは使いたくない。ウェブメールぐらいが見られれば十分ですね(笑)。

こちらのおすすめ記事もいかがですか?