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連載コラム
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ディテールの冒険vol.24 藤井厚二の開口部〈後編〉

文・イラスト:堀 啓二(共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授)

空気に流れをつくる開口部

聴竹居の大きな特徴のひとつは、空気の流れを創り出す開口部です。一般的には前回話をした日本の民家のように開放的につくられた日本の構造を生かし、開口部を2カ所設け通風を行い、居心地の良い住まいをつくり出してきました。

吉田家断面パース

しかし、無風に近い蒸し暑い日にはなかなか風も通らず不快な環境となります。それに対し、都市住宅の町屋は、囲われた2つの坪庭と植栽、外気温より温度が低い床下、深い庇、などの建築の構成が、緩やかな風の流れを自然に生み出しています。坪庭が2つあることで、緩やかな微風や散水により、坪庭に面した開口部にちょっとした気圧差が生じます。

町家ダイヤグラム

そのことで空気が緩やかに動きます。この空気の動きにより、低温に保たれた床下と植栽がもたらす緑陰による涼しい空気が室内を行き来し、清涼感をもたらしています。また、内部のほの暗さと坪庭の明るさの対比が涼感と和みの空間を生み出します。空気の出入り口を開口部と考えることができます。そう考えると聴竹居は、通常の窓以外に床下換気口、天井排気口、導気口、屋根裏通気窓などの様々な開口部により自然に空気を動かす、自然の熱を利用するという点で、町屋に劣らぬ工夫をしています。その工夫を詳しく見て行きたいと思います。

家全体で空気の流れをつくる

聴竹居平面

聴竹居は居室を中心とした一屋一室の平面です。玄関から入ってすぐに居室があります。ここを中心に小上がりの畳の間、食事室、読書室、客間、そして縁側が雁行して配置されています。それぞれが場をつくり、緩やかにつながった空間です。この連続した空間自体が居間であり、人の気配を感じつつ、自分の居場所も確保できます。当時ではまだ珍しい和と洋の長所を折衷しつつ、日本の空間の引戸による構成を生かした、開いたり閉じたりできるフレキシビリティの高いワンルームの平面計画です。

これにより空間は連続し十分な自然通風が確保されています。それに加えて、図にようにA「床下換気口から通気筒、屋根裏通気窓に抜ける風の道」、B「地中を通る導気筒から、夏は涼しく冬は暖かい空気を取り入れ、夏は天井排気口から天井を通し屋根裏通気窓に抜ける風の道」を設けています。

聴竹居断面パース1
聴竹居断面パース2

夏は低温多湿の床下から暖まった屋根裏へとドラフト力により自然な風の流れを生み出し、床下の暖まった空気を屋根裏に導くとともに、床下から運ばれる低温の空気で屋根裏の温度を下げる役目を果たしています。冬は縁側の天井排気口は閉じてダイレクトゲインで暖まった空気を逃がさず利用しています。

聴竹居空気の流れ
聴竹居天井排気口

この様に風の道は、特に日本の高温多湿の厳しい夏に対応し、快適な環境を実現しています。
まさに空気の動きを自然に生み出す開口部と言えます。

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