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連載コラム
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ディテールの冒険vol.22 清家清の窓〈後編〉

文・イラスト:堀 啓二(共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授)

無駄を削ぎ落した究極の空間
-もったいないの思いが生み出す自然に溶け込む居心地の良い空間

前回取り上げた「森博士の家」1951年、「斎藤助教授の家」1952年、「宮城教授の家」そして、自邸である「私の家」1954年に代表される清家先生の住まいは、戦後物資の少ない時代の建築です。いかに少ない資材で有効な住まいを創り出すかもテーマの一つだったと思います。それがもったいないの思いです。
「森博士の家」と「斎藤助教授の家」は木造、「宮城教授の家」はコンクリートブロック造、「私の家」はRC造と構造は異なるものの、空間の構成には共通点があります。一つは天井高と建物高さです。天上高は現在一般的な住まいと同じほぼ2,400が中心で、2,290~2,500と決して高いとはいえません。また、天井懐は究極と言って良いほど薄くつくられていて、低い天上高とともに階高を抑えた経済的な計画です。それに取り付く間戸=窓は垂れ壁のない天井一杯のハイサッシです。このもったいないの思いに基づく経済的な計画について、具体的に「私の家」で見ていきましょう。

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「私の家」では構造であるコンクリートスラブそのものが屋根の下地と天井の仕上げになっています。屋根は屋根スラブの型枠に使用した杉板を野地板として転用、スラブ勾配に直接取り付けた垂木に打ち付け、アルミの瓦棒で葺いて、無駄のない緩勾配を実現しています。深い軒を持つ水平に伸びる屋根の大きさは、型枠に使用する市販の杉板寸3,700(奥行7,400)で決めるなど徹底して無駄を無くしています。
南面の間戸=窓は2つあります。一つは天井一杯の掃き出し窓で庭と連続する玄関兼用の開口部です。ガラス戸(2本)、がらり戸(2本)、板戸の5本引きで様々な使用ができます。板戸とがらり戸は雨戸の役目を果たします。ガラス戸を開け雨戸を閉めることで、安全性も確保しつつ自然通風も可能です。床と地面のレベル差150と内外の石張りの同じ仕上げが連続性を強めています。もう一つのサッシごと収納してしまう落し込み窓は、上部のスポンジクッションがコンクリートスラブに直接あたり機密性を確保、天井に枠が無く内外の天井が連続し途切れない一つの面となります。このように天井はそのまま庇へと連続し一つのスッキリした面を構成します。この連続する天井面が内部と外部の境界を曖昧にし、天井高の低さを緩和、気持ち良い開放感を生み出しています。
深い庇と大きな間戸=窓は、自然をコントロールしつつダイレクトゲイン等自然を利用するのに役立ちます。低い天井は空調にも有利です。
こうした無駄を削ぎ落した工夫が、資源の節約とともにヒューマンなプロポーションを生み出し、空間に緊張感と落着感をもたらし、庭までが住まいの一部となる居心地の良い住まいを創り出しています。これは狭小住宅が多い日本の中で狭いながらも快適な居場所をつくる開口部の手法として有効に機能するはずです。

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堀 啓二(ほり・けいじ)共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授/建築家

堀 啓二(ほり・けいじ)

共立女子大学家政学部
建築・デザイン学科教授/建築家

1982 年東京芸術大学美術学部美術研究科建築専攻修了。 1983-85 年有限会社デザインリーグ勤務。1989 年株式会社 山本・堀アーキテクツ設立。2000-02 年 明治大学工学部建築 科非常勤講師。 2000-04 年 工学院大学建築学科非常勤講師。 2004 年 共立女子大学家政学部生活美術学科建築専攻助教授。 2010 年 共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授

堀 啓二(ほり・けいじ)共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授/建築家
共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授 / 建築家堀 啓二(ほり・けいじ)

1982 年東京芸術大学美術学部美術研究科建築専攻修了。1983-85 年有限会社デザインリーグ勤務。1989 年株式会社 山本・堀アーキテクツ設立。2000-02 年 明治大学工学部建築 科非常勤講師。2000-04 年 工学院大学建築学科非常勤講師。2004 年 共立女子大学家政学部生活美術学科建築専攻助教授。 2010 年 共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授

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