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連載コラム
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ディテールの冒険vol.22 清家清の窓〈後編〉

文・イラスト:堀 啓二(共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授)

「しかし、私は人間の棲み家としては平屋がいちばん優れているように思う。特に雨の多い日本の住宅には、地上からほど高い所にユカを設けた平屋がよい。ユカを高くするのは床上浸水とならぬ算段である。環境が許すなら、ゆったりとした庭のある平屋に住んで、お天気のよい日は庭に出て太陽をいっぱい浴びて暮らしたい。」と住まいは自然を享受できる場であるべきだと清家先生は述べています。
ヨーロッパ、中国大陸は"壁の文化"です。厳しい寒さに対応して厚い煉瓦、石、土の壁が人々の生活を守ってきました。ヨーロッパ、中国大陸では椅子の生活ということもありますが階高が高く天井高も高い。壁で閉ざされた空間にはこの天井の高さが必要です。この縦への開放感が閉塞感を解消し居心地の良さを生み出します。壁の文化でない日本でも、現在狭い敷地で外との関係性が取りにくい場合は、上から光が降り注ぐ吹き抜けが気持ち良い空間を生み出していますが、目線での開放性がなく、長い時間を過ごすには少し辛いように私は感じます。
これに対し日本は、"開口部の文化"です。木造軸組構造の日本の民家の外壁は柱と柱の間に設けた間戸=窓によって創り出されます。すなわち開口部そのものが外観です。日本には美しい四季があり、厳しいのは夏と冬の数日です。庇に守られた縁側空間を持つ壁面一杯の間戸=窓がその環境を生かします。間戸=窓は光、風、緑、景観等自然を採り入れる口であるとともに、風雨から室内環境を守る壁の役割も必要です。紙を張った障子、板貼の雨戸・蔀戸あるいは薄いガラス板が紙に代替したサッシ程度で十分な生活が可能です。この"開口部の文化"が庭自体も住まいの一部とした自然と一体となった気持ち良い生活を生み出しました。
このように垂直方向への開放性ではなく日本の豊かな自然環境=美しい四季に溶け込む生活を可能とする水平方向への開放性が居心地の良い住まいを創り出します。

堀 啓二(ほり・けいじ)共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授/建築家
共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授 / 建築家堀 啓二(ほり・けいじ)

1982 年東京芸術大学美術学部美術研究科建築専攻修了。1983-85 年有限会社デザインリーグ勤務。1989 年株式会社 山本・堀アーキテクツ設立。2000-02 年 明治大学工学部建築 科非常勤講師。2000-04 年 工学院大学建築学科非常勤講師。2004 年 共立女子大学家政学部生活美術学科建築専攻助教授。 2010 年 共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授

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