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連載コラム
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ディテールの冒険vol.19 アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto) 自然と対峙する建築〈前編〉

共同執筆 石垣 明子(共立女子大学 大学院 建築設計研究室)

20世紀の住まいはどんな地域にも適用可能な、コンクリート、鉄そしてガラスでつくられた開放的なインターナショナルスタイルが主流でした。そのような時代に、厳しい地域の環境に対峙し、その環境とうまく付き合いながら、その環境と一体となった居心地の良い住まいをつくった建築家がいます。フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトです。

アアルト自宅兼スタジオ[クリックで拡大]

アアルトは、フランク・ロイド・ライト、ル・コルビュジェ、ミース・ファンデル・ローエ、ルイス・カーンとともに20世紀を代表する建築家として知られています。アアルトが生まれたフィンランドは、北緯60度から70度の間にある、南北に長く、面積の約1/3が北極圏に入る、北ヨーロッパの国です。「森と湖の国」と言われ、国土の65%を森林、10%を湖、沼と河川が占めています。平坦で広大な大地の上に無数に散らばる湖水の凪いだ水面や、果てしなく続くまっすぐに生えそろった白樺やもみの木という単調な景色が広がっており、訪れる人は「静かな国」と感心します。そして、首都ヘルシンキの年平均気温は6.3℃、夏は30℃、冬はマイナス20℃になる日もあり、北極圏以外でも白夜がある厳しい環境の国です。
アアルトは1898年、そんなフィンランドの中西部クオルタで生まれました。ちょうどその年、フィンランドでは独立の機運が高まっていて、シベリウスが交響詩フィンランディアを発表しました。この頃フィンランドはロシアやドイツからの侵略を受け、民主主義運動や独立運動がおきていました。アアルトも例外ではなく、フィンランドの独立のため戦地に赴きました。そして、フィンランドの復興計画を考えていました。このことが、アアルトが母国で建築をつくり続けたことの一つの要因になっています。
父親は土地測量技師、母方の祖父は森林業務管で、幼い頃彼らから「森は人間を必要としないが、人間は森を必要としている」と教わり、とても厳しい自然環境ではあるが、日光、緑、水という環境が建築にとってとても重要であることを学びました。
厳しい環境に対応するように、北欧の建築は古くから壁が多い建築でした。木材が構造材料として用いられていた時代でも、日本の木造建築のように「夏を旨とした建築」として、柱、梁の軸組の上に屋根を掛けるという開放的な方法ではなく、「冬を旨とした建築」として、校倉造りのように木材を積み上げて壁をつくり、その上に屋根を掛けていました。寒くて長い冬を過ごすために、積層された木の壁ほど断熱効果の良い適切な構造は他にはなかったからです。


堀 啓二(ほり・けいじ)共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授/建築家
共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授 / 建築家堀 啓二(ほり・けいじ)

1982 年東京芸術大学美術学部美術研究科建築専攻修了。1983-85 年有限会社デザインリーグ勤務。1989 年株式会社 山本・堀アーキテクツ設立。2000-02 年 明治大学工学部建築 科非常勤講師。2000-04 年 工学院大学建築学科非常勤講師。2004 年 共立女子大学家政学部生活美術学科建築専攻助教授。 2010 年 共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授

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