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連載コラム
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ディテールの冒険vol.13 R.M.シンドラーの開口部〈前編〉

「住む人のため」を追求した住まい

R.M.シンドラーは、近代建築の巨匠であるル・コルビュジェと同時代に、住宅を中心に活躍した建築家です。
1887年、ル・コルビュジェと同じ年にウィーンに生まれ、ウィーン工科大学及びウィーン美術アカデミーでオットー・ワーグナーとアドルフ・ロースの影響の下、建築を学びました。アドルフ・ロースの奨めにより、1914年第一次世界大戦の直前アメリカに渡ります。ウィーン時代、フランク・ロイド・ライトの作品集「ヴァスムート・ポートフォリオ」に出会い、プレーリースタイルという空間を鋭く感知しました。アメリカ中西部の水平につながるプレーリー(大草原)にふさわしい水平を強調した屋根の下に、全体を一体とした自由で広々と連続した空間持つこのスタイルが、活き活きとしたリアリティを持つ空間として感じられたのです。渡米後OSR(オッテンハイマー・スターン&ライカールト)事務所でドラフトマンとして3年間働いた後、フランク・ロイド・ライトに師事します。
この様な経歴から、R.M.シンドラーの創る空間は、アドルフ・ロースの影響を受けながらも、次の言葉からも分かる様に初期の建築にはフランク・ロイド・ライトの影響が色濃く見られます。
「私はライトがこの新しい媒体を理解していることを認めた。ここには「建築空間」があった。それはモールディングやキャップスやファイナルスの問題ではなく、空間が形態と意味深い関係を有しているのである。彼こそ最初の建築家である。ライトの重要性は初期の住宅群にある。その後の作品は彫刻的になっていく。彼は彫刻的な形態を用いて建築に地域性を付与するようになる。東京にあるホテルは、地域性の直接的な反映というより、伝統的な東洋的なモチーフを用いた巨匠の戯れに見える」
アドルフ・ロースの建築家としての課題は、暖かく居心地の良い空間を創り上げることでした。アドルフ・ロースは、単純な箱の中に複雑に連続する豊かな内部空間という、外部とは切り離された内部に向かう豊かで気持ち良い生活空間を創り出しました。それに対し、ライトは流れる様な連続した内部空間を創りつつ、外部へと連続する「建築空間」を創り出しました。R.M.シンドラーは、アドルフ・ロースの身体をやさしく包み込む様な内部空間の連続性を忠実に継承しつつ、その境界を破り境界自体を曖昧にする内部と外部が連続しあう空間を創り出します。この空間構成は、内外連続する日本の空間に通じるものとも言えます。

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堀 啓二(ほり・けいじ)共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授/建築家
共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授 / 建築家堀 啓二(ほり・けいじ)

1982 年東京芸術大学美術学部美術研究科建築専攻修了。1983-85 年有限会社デザインリーグ勤務。1989 年株式会社 山本・堀アーキテクツ設立。2000-02 年 明治大学工学部建築 科非常勤講師。2000-04 年 工学院大学建築学科非常勤講師。2004 年 共立女子大学家政学部生活美術学科建築専攻助教授。 2010 年 共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授

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