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連載コラム
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ディテールの冒険vol.11 ミース・ファン・デル・ローエの開口部〈前編〉

装飾を削ぎ落した最小限でつくられた空間こそが豊かな空間である。
19世紀以降の建築は、様式主義と呼ばれ「様式」というルールに沿ってデザインされ、様々な「装飾」で飾り付けられたものが主流でした。産業革命以後、新しい産業が次々と興り多くの富裕層が誕生します。その成り金達の社会的成功のシンボルそしてステイタスとして「装飾建築」がもてはやされました。「装飾」はあくまでも装飾です。建築の空間を飾る要素であって、空間を生み出す要素ではありません。日本の住まいは、柱梁という開放的な骨格の中に引戸という建具で、自然をコントロールしフレキシブルな場をつくり出してきました。金の襖、透かし彫りの欄間、折上げ格天井などある程度の装飾が施されるものの、その骨格は崩れることなく豊かな場となっています。まさに「Less is more」の空間です。建築は、その骨格と空間を構成する「もの」が持っている力が、うまくかみ合ってこそ初めて使い続けられる豊かな空間となります。装飾建築はいつか飽きられ、見捨てられ使い続けられない運命を持っています。

「50×50」ハウス案[クリックで拡大]

装飾が主流のこの時代、ヨーロッパのアーティスト達からアバンギャルド芸術の活動がおきていました。リートフェルトのシュレーダー邸で取り上げたデ・ステイル運動やロシア構成主義などが、装飾様式を排除し、幾何学形態をモチーフとした面と線による単純化した構成により、透明性の高い新しい空間の誕生を予感させる「かたち」を生み出しました。これらの運動に感化されたミース・ファン・デル・ローエは、建物をシンプルな箱形に置き換え、デザインに使用される造形モチーフは極限まで削ぎ落し骨格のみの表現としました。この様にしてできた建築は、内外の境がなく、まったく新しい感覚と豊かさをもたらしたに違いありません。


堀 啓二(ほり・けいじ)共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授/建築家
共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授 / 建築家堀 啓二(ほり・けいじ)

1982 年東京芸術大学美術学部美術研究科建築専攻修了。1983-85 年有限会社デザインリーグ勤務。1989 年株式会社 山本・堀アーキテクツ設立。2000-02 年 明治大学工学部建築 科非常勤講師。2000-04 年 工学院大学建築学科非常勤講師。2004 年 共立女子大学家政学部生活美術学科建築専攻助教授。 2010 年 共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授

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