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連載コラム
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ディテールの冒険vol.7 ルイス・カーンの開口部 <前編>

今回紹介する建築の設計者であるルイス・カーンは、建築に対する哲学的な言葉を多く残しています。その中の一つに「ROOM(部屋)は建築の始まりである」「ROOM(部屋)は心の場所である」という言葉があります。1971年に展覧会「city/2」のために描かれた美しいスケッチに添えられたこの言葉は、そのスケッチと共にルイス・カーンが建築をいかにして創るかという建築感を表していると思います。このスケッチは、雑誌a+u0902(461号)特集ルイス・カーンの住宅(171ページ)、東京大学出版会刊行の香山壽夫著「建築意匠講義」(29ページ)などに掲載されているので参照して下さい。
スケッチには、ふんわりと空間を包み込むリブ・ヴォールト天井と壁面、その中央には空間の中心をつくり出す暖炉と暖かさを感じる火があります。その暖炉の前に、腰を下ろした二人の人物が描かれています。この二人がとても重要です。やさしく人を包み込むROOM(部屋)は、一人では不十分な空間です。建築は、人を守るシェルターの役割を果たすことは当然ですが、それだけではただの箱です。人は一人では生きていけません。人は必ず育ってきた家族や環境があります。そして、様々な人たちに助けられ、時には役に立ち共に生きてきたはずです。ROOM(部屋)は「人間関係」をつくるため、人と人を結びつける役割も担っています。すなわち、建築=住まいは、自分が安心して過ごせる場であるとともに、人と共に生きてゆく場でもあります。
しかし、人が共に生活する場所としては、シェルターや暖炉だけでは不十分です。人は、中での快適さとともに、外(自然、人、都市)とのつながりも必要です。安全、安心のため閉じつつも、開く必要があります。スケッチには、二人のうちの一人の後ろに開口部が描かれています。窓のように見えますが、戸口かもしれません。外に開き、外とのつながりをつくり出すのがこの開口部で、居心地の良い居場所を生み出す重要な要素です。

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堀 啓二(ほり・けいじ)共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授/建築家
共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授 / 建築家堀 啓二(ほり・けいじ)

1982 年東京芸術大学美術学部美術研究科建築専攻修了。1983-85 年有限会社デザインリーグ勤務。1989 年株式会社 山本・堀アーキテクツ設立。2000-02 年 明治大学工学部建築 科非常勤講師。2000-04 年 工学院大学建築学科非常勤講師。2004 年 共立女子大学家政学部生活美術学科建築専攻助教授。 2010 年 共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授

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