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連載コラム
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ディテールの冒険vol.4 シュレーダー邸/H・T・リートフェルト 住み続けられる住まい〈後編〉

アイデアのたまて箱

1924年、今から約85年前に建てられた「シュレーダー邸」には、すでに21世紀が要望するスペースへの“しかけ”が盛り込まれていたのに驚かされます。「シュレーダー邸」内部には、その小規模な外観からは想像ができないリートフェルトの家具職人らしいアイデアが随所に施されています。そのいくつかを紹介します。1階では、入り口玄関脇の待合い風ベンチ、階段を数段登った踊り場のような場に設けられた皮の背もたれ付きベンチを持つ電話台、玄関コートクローゼット下のラジエター、空間の広がりを創り出す書斎に設けられたガラス欄間、アートとして表現された碍子を散りばめた配電盤、1階から2階へ食事を運ぶためのリフト(手で紐を引き上げる形式)、階段途中の踊り場に設けられたバランサー付きの大きな引戸、2階では、開け放すとコーナーが消え去り眺望が開ける角柱無しコーナーウインドウ、ネオン管を構成主義的に配置した照明、床・壁・天井をグレーのグラデーションと3原色で塗り分けた色彩の効果、そしてオープンプランなどなど、アイデア満載、アイデアのたまて箱です。

開放性を確保し生活の変化に対応するオープンプラン

現在、家族の形態は変化しています。情報ネットワークの発達により可能となってきた在宅勤務、女性の社会進出に伴う女性の独身世帯、パラサイトシングル、DINKS、高齢者の夫婦世帯など、様々なライフスタイルが存在し、核家族を想定したnLDKの住空間では対応できない状況となっています。また、住まい続けて行く過程における家族の変化、住まいのエイジングも重要な課題となっています。21世紀の住空間には、ハード面ソフト面で様々なライフスタイル、ライフステージに対応できるスペースの提案が求められています。
この様な視点でとらえると、オープンプランは、この建物の先進性を最も表現しているアイデアであり、現在にも十分通用する“しかけ”です。

2階のスペースは、天井までの可動の壁=日本の引戸とも言える“しかけ”により、昼間は浴室までがオープンになる徹底したワンルームで、狭いながらも気持ちが良い開放感と回遊性を確保しています。夜間は閉じることによって家族4人の個室に変化するフレキシビリティの高い空間となっています。このフレキシビリティは、固定することがむずかしい現在のライフスタイル、ライフステージに対応可能な空間のヒントを提示しています。これは日本の引戸文化に通ずる部分が多いと思われます。これらの先人の知恵を見直し、空間に取り入れて行くことは、これからの住空間にとって重要な課題となります。

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堀 啓二(ほり・けいじ)共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授/建築家
共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授 / 建築家堀 啓二(ほり・けいじ)

1982 年東京芸術大学美術学部美術研究科建築専攻修了。1983-85 年有限会社デザインリーグ勤務。1989 年株式会社 山本・堀アーキテクツ設立。2000-02 年 明治大学工学部建築 科非常勤講師。2000-04 年 工学院大学建築学科非常勤講師。2004 年 共立女子大学家政学部生活美術学科建築専攻助教授。 2010 年 共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授

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