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連載コラム
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ディテールの冒険vol.1 吉村山荘/吉村順三 居心地の良い住まい <前編>

吉村順三氏は、朝日ジャーナルの中で「建築家として、もっとも、うれしいときは、建築ができ、そこへ人が入って、そこでいい生活がおこなわれているのを見ることである。日暮れどき、一軒の家の前を通ったとき、家の中に明るい灯がついて、一家の楽しそうな生活が感じられるとしたら、それが建築家にとっては、もっともうれしいときなのではあるまいか。(後略)」と述べているように、建築は人の生活のためにあり、その生活のための居心地の良い場を創り続けた建築家です。吉村氏の設計された建築は、実際にその場を体験すると、その居心地の良さがはっきりと分かります。

ある冬の晴れた日に「南台の家」を訪れました。通された居間は、とても気持ちが良い場でした。南の庭は、光にあふれていながらも、室内は穏やかな明るさでした。南の庭の開口部に沿って長く掘られた池の反射光が、天井に波紋をつくり、そのきらめきが部屋を満たします。そのきらめきは、時間とともに変化し、時の流れと自然の変化を感じさせてくれます。反射光によるやわらかい光が、適度な明るさをもたらし、落ち着いた居心地の良い場を創り出していました。時の流れを感じつつ、時間を忘れてしまうぐらい、気持ち良く過ごすことができました。

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この場を創り出しているひとつが、開口部のディテールです。南の庭に面した開口部は、視界を遮る雨戸と障子が壁面に引き込まれ、居間は南の庭と一体となります。自然と一体となった気持ちのよい場が生まれます。人は自然と共にいたいという思いとともに、閉じた場も欲しいものです。障子は、その役目を果たします。吉村氏は、障子を単なる建具としてではなく、ひとつの大きな光の面(壁)としてとらえます。框と組子の見付を同寸とした、いわゆる"吉村障子" で、閉めるとひとつの面に見えます。障子の面は光の面となり、開け放った場合の爽快感のある落ち着きとは違った、やわらかい光に包まれた落ち着いた場を創り出します。

このように、居心地のよい場を創るには、開口部のディテールが重要です。次回は、具体的に軽井沢の山荘(吉村山荘)の開口部のディテールを見ていきたいと思います。

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堀 啓二(ほり・けいじ)共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授/建築家
共立女子大学家政学部 建築・デザイン学科教授 / 建築家堀 啓二(ほり・けいじ)

1982 年東京芸術大学美術学部美術研究科建築専攻修了。1983-85 年有限会社デザインリーグ勤務。1989 年株式会社 山本・堀アーキテクツ設立。2000-02 年 明治大学工学部建築 科非常勤講師。2000-04 年 工学院大学建築学科非常勤講師。2004 年 共立女子大学家政学部生活美術学科建築専攻助教授。 2010 年 共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授

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