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設計のヒント
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LIXILのディテールvol.16 パッシブという手法による、住まいの効率化の再考<後編> ─ 窓を通して考える日本独自のパッシブの方向性

  • 野沢正光建築工房 藤村真喜(ふじむら・まさき) 1983年 大阪生まれ/2005年 京都大学工学部建築学科卒業/2007年 同大学院工学研究科 建築学専攻修士課程修了/ 2007年 野沢正光建築工房 入社

    野沢正光建築工房

    藤村真喜(ふじむら・まさき)

    1983年 大阪生まれ/2005年 京都大学工学部建築学科卒業/2007年 同大学院工学研究科 建築学専攻修士課程修了/ 2007年 野沢正光建築工房 入社

  • LIXIL 藤井文徳(ふじい・ふみのり) 株式会社LIXIL/営業商品統括部 環境企画部

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    藤井文徳(ふじい・ふみのり)

    株式会社LIXIL/営業商品統括部 環境企画部

  • LIXIL 保坂修一(ほさか・しゅういち) 株式会社LIXIL/スケルトン商品開発部 設計サポート企画グループ

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    株式会社LIXIL/スケルトン商品開発部 設計サポート企画グループ

  • LIXIL 桝秦将(ます・やすのぶ) 株式会社LIXIL/総合研究所企画推進室

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    桝秦将(ます・やすのぶ)

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  • LIXIL 圖師丈揮(ずし・たけき) 株式会社LIXIL/商品本部 住宅サッシ統括部 サッシ商品部 商品企画グループ

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    圖師丈揮(ずし・たけき)

    株式会社LIXIL/商品本部 住宅サッシ統括部 サッシ商品部 商品企画グループ

[discussion-001]「壁厚が薄い住宅へのインプラスの納め方と、空気層の熱的評価を教えてください」

――前半は、藤村さんのキャリアや手掛けられた作品について大変興味深いお話をお聞きすることができました。後半は、藤村さんのLIXIL商品に対する質問からうかがいたいと思います。

藤村 :環境省の事業で既存住宅をパッシブソーラー改修し、計測して結果を評価する実証実験を3年間やってきました。その事業の中で改修のパターンを検討した際にサッシの改修について、内窓を付ける、サッシごと取り替える、内部に建具を付加するなどいくつかの方法の納まりを整理しました。内窓では、枠の取り付けがあまり美しく出来ないというか、特に古い住宅の場合、壁厚が薄いので、どのように納めたら良いか頭を抱えてしまいます。何か良い方法があれば教えていただきたいのですが。

圖師 :答えになるかどうか分かりませんが、見込み幅が狭いときのためにふかし用の枠をご用意しています。ただ、多分それがあまり美しくないというお話だと思いますので…。(笑)もう少し勉強させていただきます。

――今おっしゃったような既存住宅、特に木造の改修というのは、仕事としては結構あるのですか?

藤村 :そうですね。ありますね。

――恒常的にこれから出てくるということでしょうか?

藤村 :そう思います。サッシは熱の出入りを考えると一番弱い部分ですから改修項目に入ってくるのですが、外壁と絡む方法だと、小規模改修の予算の中での提案が難しいですね。

――多分その部分の改修費用が大きくなってしまうのでしょうね?

藤村 :そうなんです。だから、内窓で済むのであればコストメリットとしては良いと思います。ただ、内窓を付けた時の空気層の評価というのが私には良く分からなくて。空気層で断熱性が上がるのであれば、温熱的にも寄与すると思うのですが、その辺りのことを少し詳しく教えていただければありがたいと思います。

藤井 :内窓と外窓の間の空気層の話ですが、実は空気層は、その幅がある値以上になると対流を始めてしまいます。

藤村 :対流で、あまり断熱効果がなくなるという風に言われていますが…。

藤井 :そうですね。対流が起きると断熱効果は下がると言われています。ですから、ある程度の幅の空気層があれば断熱効果は上がるのですが、対流を起こしてしまう程その幅が大きくなると、効果はそれ以上アップしないということになります。

藤村 :なるほど。

――でも、これはとても大事な話ですね。要するに、空気層がある程度以上の幅になるとそこから先効果は変わりませんよ、ということをきちんと言ってくださらないとね。

藤村 :特に改修の場合は、どういう方法で改修したら結果どうなるという検証が必要です。今のようなお話は耳にしてはいたのですが、現状では、その指標がとてもあいまいなままにされていると思います。

藤井 :そこのところを、私たちメーカーはきちんと説明しなきゃいけないですね。

藤村 :そうですね。部材自身の性能と、かつ構成をどうしたらどのくらいになるという指標値が出ていないと、設計者やビルダーは全体の設計の中で優先順位を決めて何を選択すべきか判断しにくいですね。例えばシングルガラスの内窓をつけても、ガラスが合計2枚になったからといって複層ガラス同等になるはずがないけれども、どの程度温熱効果があるかというようなことです。

藤井 :例えば二重サッシにする場合も、内窓を付けたときに空気層をこれだけ取ってくださいとは、現状書いていませんね。

藤村 :そうですよね。

藤井 :でも、付ければこれくらいの断熱性能があります、と言えるので、それ以上の説明を省いている。その辺の根拠を示して欲しいということですね。

藤村 :そうですね、そういった説明があるとありがたいですね。

藤井 :実は、すごく面白い実験があって、例えば二重サッシの外窓の気密性が非常に悪い場合、性能値はどうなると思いますか?

藤村 :そうですね、どうなるのでしょう?

藤井 :気密材なしの外窓に内窓を付けた場合と、気密材付きの外窓に内窓を付けた場合の性能値は、ほとんど変わりませんでした。

藤村 :え、そうなのですか?

藤井 :片方できちんと気密がとれていれば…、例えば内窓で気密がとれていれば、この2枚の窓の間では空気の循環はありませんよね。

藤村 :あぁ、なるほど。

藤井 :入り口と出口がないと循環しない。確かに微量の循環はあるにしても、大きな孔が開いていて風で流れていく訳ではないので、外窓の気密材がなくてもほとんど数値は変わらないですね。

藤村 :その辺についての数値の資料がないのであいまいだったんですね。(笑)新築のようにある製品単体ではなく、既存改修の現場のように要素を複合していく場合、断熱や気密の面でどうなるのか、設計の方針の根拠となるような実験データがあると良いと思います。

藤井 :その辺りのことは説明していないですからね。例えば、引違いのサッシだと、網戸は片方の障子にだけ付いていますね。冬場、網戸のない方のガラスは結露で濡れているのに、網戸がある方はほとんど結露していないという経験はありませんか?
網戸ってあんなに孔だらけなのに、ガラスとの間に空気層を形成して、それが多少なりとも断熱に寄与しているんですね。もしかしたら、そういうデータも含め、メーカーはもう少しきちんと提供する必要があるのかもしれませんね。

――多種多様な製品が開発されて、その性能も様々だということになると、以前に比べ情報公開の必要性が格段に高まっているということは言えるでしょうね。

藤井 :そうですね。今までは単に製品を提供して、その製品をどう使っていただくかということだったのですが。

藤村 :単体の製品の情報だけで済んでいたのが、周辺のものを含めたいろんな情報が必要になってきたということだと思います。今の網戸の例などは、設計者には面白いと思います。何というか、ローテクなことの方が説明しやすいんですね。

藤井 :お客様にはその方が説明しやすいですよね。

藤村 :お客様にももちろん説明しやすいし、私たち自身も製品の仕組みがそこまで分かっていないので、ローテクな説明の方が事象として理解しやすいのかもしれません。個人的には、あまりハイテクになったり複雑になったりするよりも、そういう話の方に興味が湧いてきます。

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