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設計のヒント
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LIXILのディテールvol.11 ビルディングと住宅の垣根を越えて〈前編〉 ─ 既成概念に囚われない発想が生む開口部の新しい形式

  • 山本理顕設計工場 妹尾慎吾(せのお・しんご) 1978年 熊本生まれ 横浜育ち。2003年 東京工業大学大学院 建築学専攻修了。2003年 山本理顕設計工場 入社。

    山本理顕設計工場

    妹尾慎吾(せのお・しんご)

    1978年 熊本生まれ 横浜育ち。2003年 東京工業大学大学院 建築学専攻修了。2003年 山本理顕設計工場 入社。

  • LIXIL 圖師丈揮(ずし・たけき) 株式会社LIXIL/商品本部 住宅サッシ 統括部 サッシ商品部 商品企画グループ

    LIXIL

    圖師丈揮(ずし・たけき)

    株式会社LIXIL/商品本部 住宅サッシ 統括部 サッシ商品部 商品企画グループ

  • LIXIL 高橋謙司(たかはし・けんじ) 株式会社LIXIL/ビルプロジェクト統括部 ビル営業部 ビル営業開発G

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    高橋謙司(たかはし・けんじ)

    株式会社LIXIL/ビルプロジェクト統括部 ビル営業部 ビル営業開発G

  • LIXIL 片岡 保(かたおか・たもつ) 株式会社LIXIL/ビルプロジェクト統括部 ビル営業部 CW推進G 商品開発

    LIXIL

    片岡 保(かたおか・たもつ)

    株式会社LIXIL/ビルプロジェクト統括部 ビル営業部 CW推進G 商品開発

  • LIXIL 新田欽哉(にった・きんや) 株式会社LIXIL/商品本部 ビル建材統括部 ビル商品部 SRグループ

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    新田欽哉(にった・きんや)

    株式会社LIXIL/商品本部 ビル建材統括部 ビル商品部 SRグループ

妹尾 慎吾(せのお しんご)(山本理顕設計工場)
圖師 丈揮・高橋 謙司・片岡 保・新田 欽哉(LIXIL)
司会: 真壁智治 (M.T.Visions)

今回の妹尾氏の疑問・要望

――前回まで主に住宅の設計を手掛けられている方にご参加いただいてきましたが、妹尾さんは、これまで文化施設や集合住宅を主に手掛けてこられたということで、これまでとは違った切り口で、色々なお話がうかがえればと思っています。
まず、皆さんにお聞きしているのですが、妹尾さんが山本理顕設計工場(以後山本事務所)にお入りになった動機と経緯、そのあたりからお聞かせいただきますか。

妹尾:僕は、出身が東京工業大学で研究室は坂本一成先生の研究室です。

――坂本さんがお辞めになる前ですね。

妹尾:そうです。それで、大学院を修了して実際に仕事に就くときに、なるべく大きな建物をやりたいと考えて日本の建築家の作品をいくつか見て回ったのですが、そのときに「埼玉県立大学」(山本理顕設計工場/1999年)を見たことがその後の進路に大きく影響しています。当時はそれほどはっきり分かっていたわけではないですが、今考えてみると、大規模な建築でありながらそれぞれの部分をつくっている空間の質が、いわば全体の質といえるものまで広がっている形があることに興味をもったのだと思います。

埼玉県立大学(提供/山本理顕設計工場) 埼玉県立大学(提供/山本理顕設計工場)

――エポックメイクな作品ですね。学生の頃は、山本さんの作品はご覧になっていましたか?

妹尾:僕は横浜で育ったので、横浜の中のいくつかの作品は見ています。緑園都市や三ツ境の集合住宅などですね。でも、それよりは先ほど挙げた「埼玉県立大学」が一番のきっかけだったと思います。

真壁:山本事務所に入所されたのは何年ですか?

妹尾:2003年です。

――現在のスタッフの中では勤務歴は長い方ですか?

妹尾:そうですね。正式には山本を除いて上から2番目になります。

――では、ご用意いただいた資料をもとに、質問も織り交ぜてお話をうかがっていくことにします。

Works—天津ハウジングプロジェクト

妹尾:これからご紹介するのは、実際僕が担当した物件になります。まず、2003年に入所した後に、最初に関わったプロジェクトが「天津ハウジングプロジェクト」です。このときには山本が他の建築家と一緒にやろうということを考えて、4人の建築家の方と一緒にプロジェクトを進める形になっていました。宇野求さん、塚本由晴さん、小嶋一浩さん、西沢立衛さんですね。23万平方メートルという広大な敷地に、新しく戸建て群、アパート群を計画するというプロジェクトですが、途中で天津市の上層部の方が替わられてプロジェクト自体は流れてしまいました。

――計画はかなり進んでいたのですか?

[クリックで拡大]

妹尾:我々の部分では、モックアップを1棟丸ごとつくるところまで進んでいたのですが…。
配置図でいうと、このグレーの細長く並んでいるのが山本事務所です。ここでは、5人の建築家をゾーン毎に完全に分けるというのではなくて、ある配置の形式を持ちながら、緩やかに混じりあって全体をつくるというやり方を採っています。

――なかなか面白い方法ですね。

妹尾:そうですね。ただ、1戸1戸の住宅の規模が大きくて、一番小さい戸建てでも400平方メートルくらいなんです。

――この写真には、山本さんと西沢さんと、他の建築家の方のものも映り込んでいる訳ですね。

(提供:山本理顕設計工場) (提供:山本理顕設計工場)

妹尾:このあたりが西沢さんのゾーンで、この建物群に山本事務所が混ざってたり…。その奥は塚本さんですね。

――デザインボキャブラリーのオムニバスという感じが、面白い効果を生んでいますね。これはどういうデザインコードではめ込んで行ったんですか?

妹尾:それはむしろ全員で話をしながらという感じですね。それぞれが個性の強い建築家ですから、みんな自分はこういうことをやりたい、いやこういう考え方はどうだろう…といった議論を交わしながら進んで行ったことを覚えています。

――例えば、これは道路に隣接する建物として意図しよう…といった考え方もあったんですか?

妹尾:はい。ここがゲートシティということもあって…入り口があって真ん中に環状の道路があって…という形ですが、特に山本事務所の建物はその長い道沿いに陣取ろうということになりました。

――なるほど。

妹尾:他の方は、この間の広場みたいなところを囲んで…という形式が多いのですが、山本事務所はこの道沿いと、あとは他の人のところにぽつんと紛れ込んでいくという構成をとっていました。

――ゾーンを区切って後は丸投げという手法が多い中、相互に浸食しあうという関係に新たな可能性を感じますね。

妹尾:これはわれわれが計画した、600平方メートルの戸建て住宅のプロトタイプです。で、このときは、僕も山本事務所に入ったばかりで、いきなり600平方メートルの戸建て住宅ということで、最初は想像もつきませんでした。(笑)

(提供:山本理顕設計工場) (提供:山本理顕設計工場)

――あまりにも広いってことで面食らうんですね。

妹尾:このときは、それぞれの住戸を細長く配置して道沿いに並べていこうということで、「薄くて長い」というのが一つのボキャブラリーだったんですが、それを実現するために、構造とファサードデザインをどういう風に考えるかということが、建築的なテーマではありました。平面図を見ると、短手にずっと壁が並んでいて、それが基本的な構造になっています。ただ、ところどころ2スパン分の床面をつくっている、そこに対しては目隠しの壁状の部分がブレース的な形で効いています。つまり、基本的に構造と立面のデザインが不可分のものというか、一体となって考えられています。

――開口部については、どういう考え方ですか?

妹尾:この模型でも、ぱっと見、どこが外部でどこが内部なのか良く分からないのではないでしょうか。それが基本的な主題になります。実際ガラスが入ってしまうと分かってしまうのですが、このときはなるべくサッシを隠していくような形を意図していました。白い壁があってボリュームが薄くて向こう側が透けて見える、というイメージです。

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